コロナ禍で増えたもの減ったもの。あれこれあります。増えたものの一つとして、自転車通勤をする人の数ってのがあげられると思います。ある調査によれば自転車通勤をする人の23%が、このコロナ禍がきっかけで自転車通勤を始めたそうです。(出典:IT mediaビジネス | コロナ禍で増加の自転車通勤 都内企業では半数が許可、積極推奨も

かくいうワタシもそのうちの一人です。安全運転を心がけながらも、頭の中で“日本のサセがコーナーをついてきたぁ!”と実況しながらチャリを漕いで通勤しています。そしてふと思いました。「あ、ロードレースについての記事一本も書いてないな」と。

というわけで今回はツール・ド・フランスなどでお馴染みのロードレースについて記事にしたいと思います。

今回の記事は、留学先(イギリス)でとりあえず南にチャリを走らせていたら帰り道がわかんなくなっちゃって、原っぱで野宿をしたサセがお送りします。

1. 自転車競技の基礎:自転車競技ってなに?

ロードレースについて話す前に、自転車競技の全体感について整理しておきます。世界の自転車競技はUCI(国際自転車競技連合)という組織が統括しています。

このUCIによると自転車競技には、ロードレース、トラック、マウンテンバイク、BMXレース、BMXフリースタイル、トライアル、シクロクロス、インドアの8つの種類があるようです。

今回はこの中からロードレースに絞って記事にしていきます。

2. ロードレースってどんなスポーツ?

2-1. ロードレースの全貌を分かりやすく分類して整理

ロードレースって検索しても、サイトによって情報がまちまちでなかなかその全貌が見えづらかったりします。というわけでまずはロードレースについて整理しときます。

ロードレースは競技のスタイル、期間開催場所によって分類ができるようです。

まずは競技のスタイルですが、タイムトライアルレースの2つのスタイルに分類されます。タイムトライアルは決められたコースを時間差でスタートして、そのタイムを競います。選手個人がひとりずつ時間差でスタートしてタイムを競うものを個人タイムトライアル。チーム単位で、時間差でスタートし規定人数の最後の選手がゴールしたときのタイムで競うのがチームタイムトライアルといいます。(出典:JSPORTS | サイクルロードレースとは

一方、レースについては出場選手が一斉にスタートして順位を競います。このレーススタイルですが、期間によって2つに分けられるようです。1つがワンデーレースと呼ばれるもので、その日のうちに勝負が決します。別名クラシックレースなんて呼ばれ方もします。もう1つは2日間以上に渡って開催されるステージレースというもの。これは1日を1ステージと区切るためその名がつきました。(出典:JSPORTS | サイクルロードレースとは

ちなみにツール・ド・フランスは3週間、21ステージで争われます。というわけでステージレースに分類されます。

ステージレースに分類されるツール・ド・フランスでは、選手たちは合計3,500kmを走破します。北海道のてっぺんにある稚内から名古屋までを往復するかんじですね。これだけの長い距離を走るので、途中のコースは市街地だったり山間部だったりします。

一方、ワンデーレースは1日で終ります。この1日で勝負が決するワンデーレースの開催場所は大きく2つあります。1つが主に市街地を走るクリテリウムと言われるもの。もう1つが山間地帯を走るヒルクライムというものです。

クリテリウムについては市街地に交通規制をかけて比較的短いコースを設置します。国内のクリテリウム大会では2013年から毎年開催されているさいたまクリテリウムなんかが有名です。この大会の舞台はさいたま新都心の高層ビル群で、1周約3.5kmの周回コースを走行します。(出典:SAITAMA CRITERIUM | ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムとは?

(出典:日本自転車競技連盟 | 2016ツール・ド・フランス さいたまクリテリウム

ちなみにこのクリテリウムという言葉はステージレースでも使われている場合があります。例えば約1週間に渡って南フランスを駆け抜けるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネとか。ただ、これについては昔の名残がそのままになっているだけで、ステージレースであることには変わりないようです。

一方、ヒルクライムについては数十キロの山岳コースを走るレースです。文字通り、山(hill)を 登る(climb)レースなわけです。↓の写真は2016年に開催された箱根ヒルクライムのものですが、見ているだけで太ももに乳酸がたまりそうな坂道です。

2-2. 実はチームプレーや戦略性が問われる競技

ここまでで、ロードレースの全体感がおわかりいただけたかと。

ここからはルールにフォーカスしていきたいと思います。上でも説明したとおり、タイムトライアルは時間差で選手orチームがスタートして、そのタイムを競うものです。まぁわかり易いですよね。

でもレーススタイルの方は、もちっと奥深いようです。“レースにエントリーした選手が、よーいドンでスタートして一番初めにゴールした人が優勝だろ”。そう思ったアナタ。ワタシもそう思ってました。しかし違うんです。実はレーススタイルのロードレースってチーム競技なのです。大事なことなのでもう1度言います。レーススタイルのロードレースはチーム競技です。

一般の人々が趣味で参加するロードレースは、当然ながら個人参加です。なので、よーいドンで一斉にスタートして一番最初にゴールした人が優勝となります。しかし、プロやセミプロ(≒実業団)が参加する競技としての大会は違います。彼らはロードレースのチームに所属しており、この所属チーム単位でレースにエントリーし、順位を競うのです。

このプロ・セミプロが参加する大会についてもう少し詳しくご説明します。参加する大会によって異なりますが、ロードレースのチームは4~8人で構成されます。このチームは「エース」とよばれる選手と「アシスト」と呼ばれる選手で構成されています。そしてエースの順位がチーム全体のレース順位となります。この「エースを勝たせるためにその他のアシストがいる」ってのがロードレースの基本的な特徴なんです。

実はレースの順位以外にも勝利ポイントの獲得方法があります。それは「山岳賞」と「スプリント賞」です。レースの中には「山岳区間」と「スプリント区間」という特殊区間が用意されています。この区間で上位を獲得することでも勝利ポイントを獲得できるのです。そして山岳賞を狙う役割を担う選手を「クライマー」、スプリント賞を狙う選手を「スプリンター」と呼びます。

この区間賞を狙うのか、はたまたエースを1番にゴールに届けることを優先するのか。そこにチームごとの戦略性も出てきてくるっちゅうことです。

話をエースとアシストの関係に戻します。↓の写真を見るとエースとアシストの関係がよくわかります。黄色のジャージを着た選手がエース、そしてそれを守るように白ジャージを着た3人のアシスト選手がいます。

このアシストたちは様々な形でエースをサポートします。例えばエースのペース作り。アシストたちはエースが走りやすく、且つ敵チームが嫌がるようなペースで走ります。

風よけもアシストの重要役割です。自転車に乗ったことのある人ならわかるかと思いますが、向かい風の中で自転車を漕ぐとめちゃ疲れます。これはロードレーサーたちも同じです。プロのロードレースともなると、下り坂ではなんと時速100キロを超えたりします。時速100キロで走る自動車の向かい風を想像してもらえれば分かると思いますが、かなりの負担ですよね。そこでアシストたちはエースを向かい風から守るために、になるわけです。

他にもアシストはドリンクなどの補給もサポートをする場合もあります。選手たちは7時間ぐらいペダルを漕ぎっぱなしってこともザラです。なのでお腹が空いたり、のどが渇いたりするわけです。そこで飲食の補給区間がこまめに用意されていたり、大会によっては監督とかスタッフが乗った車が並走します。アシストたちは補給区間やこの車から果物やら飲み物を渡され、率先してエースに渡すのです。

差し出すものは食べ物や飲み物だけではありません。エースの自転車が故障したときなんかは、自分の自転車も差し出します。“ここは俺に任せて、お前は先にいけ”ってな具合に。

3. 世界ではどんな大会が開かれているの?

ここまでで、ロードレースがどんなルールで行われているのかがおわかりいただけたかと。ではここからは世界ではどんな大会が行われているのかをみていきます。

ロードレースの世界大会は冒頭でご紹介したUCI(国際自転車競技連合)という組織が統括しています。

このUCIが公認するレースは大きく4つに分類されます。UCIワールドツアーUCIプロシリーズUCIコンチネンタルサーキット1クラス&2クラスです。(出典:Tour of Japan | 栗村修のワールドツアーへの道 更新「UCIプロシリーズ」

そして、このレースに参加できるチームは大きく5カテゴリに分類されます。まずは1st divisionに分類されるUCIワールドチーム。このチームは世界のトップ・オブ・ザ・トップなレーサー集団です。次に2nd divisionのUCIプロチーム、3rd divisionのコンチネンタルチームがきます。続いて、各国のナショナルチームと国ごとに設立された地域orクラブチームです。

↓の整理にあるように、それぞれレースで出場できるチームが決まっています。例えばロードレースの最高峰であるUCIワールドツアーには、世界のトップ選手が集うUCIワールドチームが主に参戦します。2nd divisionのUCIプロチームは招待されたチームしか参加できないわけです。

次のランクのプロシリーズになると、猛者集団のUCIワールドチームの参加が65-70%と制限されます。代わりにUCIプロチームがここを主戦場に戦うわけですね。 同じようにUCIコンチネンタルサーキット1クラスは、UCIプロチーム、コンチネンタルチーム、ナショナルチームの主戦場となります。

ちなみに、UCIプロシリーズに認定されているジャパンカップサイクルロードレースは、アジア最大のレースの1つです。2020年はコロナで中止になりましたが、2019大会では3日間延べ14万人を超えるサイクルファンが開催地の宇都宮市を訪れました。(出典:ジャパンカップ | 『自転車のまち宇都宮』で繰り広げられる“本物の”ロードレース!

4. 日本のロードレース事情:どんなリーグ・チームがあるの?関わる企業の狙いは?国内で人気あるの?

ここまで世界の大会カテゴリと出場チームについてお話してきました。

ではここからは我らが日本のロードレース事情についてふれていきます。

当たり前やん、な話ですが日本にもロードレースチームは沢山あります。そしてこのロードレースチームは主に2つのリーグのどちらかに所属しながら戦っています。

1つがJBCF(一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟)というリーグ。そしてもう1つがジャパンサイクルリーグ(JCL)なるものです。

JBCFについてはその名の通り、実業団のレーシングチームが主体のリーグです。なので、シマノレーシングとかTEAM BRIDGESTONE Cyclingなんかが名を連ねます。一方、JCLは日本籍コンチネンタルチーム&ホームタウンを持つ地域密着型の独立プロチームが主に参戦しています。

(出典:JBCF | JBCFについて、JCL | ジャパンサイクルリーグとは より作成)

実はジャパンサイクルリーグ(JCL)は2021年にJBCFから独立してできたリーグです。繰り返しになりますが、JBCFはもともとシマノなどの自転車関連メーカーの実業団チームのリーグです。そこへ自転車に関係のない企業のチームも参入してきました。さらに、独立のプロチームも参加して数が増えていったという歴史があります。

今回のJCL立ち上げは、地域密着でよりプロ化(金銭面・運営面等、全て自分たちで決めること)を進めたいチームが新たなリーグを設立した、という経緯のようです。企業の枠組みの中で活動したい実業団チームと、独立して物事を進めたいチームが別々の道を歩むのはごく自然な流れなのかもしれません。

なお、JCLは“カミカゼ・ウキョウ”として世界に名を轟かせた元F1レーサーの片山右京さんがチェアマンとして牽引しています。そしてバックアップ体制もかなり強力です。タイトルスポンサーは国内大手ディベロッパーの三菱地所が務めます。三菱地所の2020年3月期の営業利益は約1.3兆円。(出典:三菱地所 | 財務情報(業績データ) まさに日本を代表するスーパー大企業がメインスポンサーになっているわけです。

前述しましたが、2019年ジャパンカップサイクルロードレース宇都宮大会には3日間延べ14万人が観戦に訪れました。ツール・ド・フランスに至っては1,500万人が現地で観戦するそうです。(出典:TOUT OF JAPAN | ツアー・オブ・ジャパン オフィシャル観戦ガイド

このように、ロードレースのイベントって地方都市に数日間で数十万~数千万もの人を集めることができるのです。

こんなふうに観戦者が集まると、必然的にその街で増えるものがあります。それは交流&関係人口です。交流人口とは観光などでその街に訪れる人の数。関係人口とは、地域や地域の人々と多様に関わる人の数を指します。今後人口が減っていく日本において、こういった定住人口以外の人口が地方創生のキーになっていくとされています。(出典:総務省 | 地域力の創造・地方の再生

実はJCLはリーグのスローガンとしてこの地方活性化を上げています。(出典:cyclowired.jp | 国内ロードレースの新リーグ「ジャパンサイクルリーグ」が始動 地域密着型9チームが参戦  もしJCLが主催する大会で数千万とは言わないまでも、数万~数十万の人々が地方に訪れたとしたら。それはその地域の交流&関係人口の増加につながり、結果的に地方活性化の一助になると考えられます。

そしてそれをさらに後押しするのが最強ディベロッパーの三菱地所。彼らは基本使命を“わたしたちはまちづくりを通じて社会に貢献します”と謳っています。(出典:三菱地所 | サステナビリティレポート2020 数万~数十万の人々を地方に集客できるJCLと、そこに生まれた交流&関係人口をまちづくりにつなげることのできる三菱地所。このタッグが実現したのがこのパートナーシップなのです。

ちなみに、プロレースの主な参加・観戦者層であるレース競技に参加する人(レース層)、サイクリングイベントに参加する人(サイクリングイベント層)、自分や仲間が計画してサイクリング・ツーリングを楽しむ人(ツーリング層)は日本に約120万人もいます。レジャーやエクササイズ層も含めると500万人を超えます。結構裾野が広いですよね。なので、JCLが1つのイベントで数万~数十万の人を集客するってのは不可能ではないわけです。

(出典:ツール・ド・ニッポン | サイクリスト国勢調査2018 より作成)

そして、意外にもDaznでの日本人のスポーツ動画視聴時間ランキングによると、サイクルロードレースはバスケットボールに次いで5番目に人気だったりします。2021年に開幕した国内初プロリーグであるJCLも、これから大きく成長していく可能性は十分にあるわけですね。

なお、JCLには現在、9つのチームが参戦しています。地方活性化を掲げているリーグだけあって、全てのチームに地名が入っています。このうち那須ブラーゼン、宇都宮ブリッツェン、チーム右京相模原、キナンサイクリングチームはUCIのコンチネンタルチームに認定されています。(出典:UCI | TEAMS2021

これらのチームがコンチネンタルチームから、UCIプロチーム、はたまたUCIワールドチームに昇格してツール・ド・フランスなんかに出場するなんて想像すると…。考えただけでオラわくわくすっぞ。

(出典:JCL | チーム より作成)

5. おわりに

最後はドラゴンボールの悟空風に書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか。

ロードレースというスポーツの分類、ルール、世界的な大会と日本での動きやポテンシャル。このへんがざっくりおわかりいただければ幸いです。今回は基本的なことについて整理整頓してご説明しました。

後編では世界的な大会において、企業がどのようにロードレースを活用し、ビジネスメリットを生み出しているのか、についてフォーカスしていきます。

後編についても頑張って書いていきたいと思いますので、ステイチューンでお願いします。

生きているすべてのみんな…。これから後編を書くから、このオラにほんのちょっとずつだけ元気をわけてくれ。