前回記事、“ロードレースを通じてスポンサー企業が得られるビジネスメリット(前編)”はいかがでしたでしょうか。前編では、ロードレースの基本の「キ」についてお話してきました。具体的にはロードレースのルールや見所から始まり、競技を統括する協会、世界の大会やらチームの種類・レベル、日本国内での状況なんかについてご説明してきました。今回は、その後編となります。

※前編は以下からお読み頂けます:

今回は、この基本の「キ」から1歩進み、ロードレースにスポンサーとして関わり、ビジネスメリットを生み出している企業の事例をご紹介します。

今回の記事は、母親を後ろに乗せて自転車の二人乗りをしていたら、漕ぎ出して3分で警察に注意されたことのあるサセがお送りします。

1. 世界のロードレース大会にはどんな企業がスポンサーしてる?

具体的な事例に入る前に、まずはどんな企業がロードレースの大会にスポンサーしているのか。その全体的な傾向をみていこうと思います。実は弊社では、毎日せっせと国内外のスポンサーアクティベーション事例を調査、ストックしています。だいたい2003年から直近まで約2万件以上の事例を社内データベースに溜め込んでいます。

このDBから、UCIワールドチームが主戦場にしているUCIワールドツアーに絞って、どんな企業がスポンサーしているのかをまとめてみました。UCIのHPを見ると、UCIワールドツアーは現時点で35のツアーが掲載されています。(出典:UCI | UCI WORLDTOUR

(出典:UCI | UCI WORLDTOUR

この35の大会にスポンサーしている企業数はざっと610あります。その全てをピックアップし、その業種ごとに分類・集計したのが↓のグラフとなります。ワタシも集計してみて意外だったんですが、もっとも多いのは食品関係のスポンサーです。だいたい5社に1社が食品関係なんですね。確かにロードレースは栄養補給が必須という性質上、「うちの商品、素早く栄養チャージできまっせ!」とアピールするには格好の場ですね。

ではここからは個別の事例についてググッと深堀りしていこうと思います。

ただ、610ものスポンサー事例があるので、どれを選んでいいものやら。とりあえず、日本人でも聞いたことのあるツール・ド・フランス(TdF)でも見てみるか、とデータベースを漁ったところ、見慣れた企業名がありました。その企業とは日本を代表する企業、NTTです。

(出典:TOUR DE FRANCE | PARTNERS OF LE TOUR

“え?日本のNTTツール・ド・フランスにスポンサー?何しとるんやろか…”と軽く調べ始めたところ、けっこうすごいことをしているようです。

企業がスポーツにスポンサーする理由って色々あります。企業名の認知拡大をするために、ユニフォームや看板に企業ロゴを掲載するとか。我々はその中でも、新しいビジネスを作るためにスポーツチームを活用する、って事例を見ると唸らずにいられません。「うぉぉ、うまいことやりよんなぁ」と。このNTTの事例はまさにこの事業創造の域にまで達しています。

というわけで、今回後編ではNTTツール・ド・フランス(TdF)にスポンサーした事例を取り上げていきます。

2. ツール・ド・フランス(TdF)ってどんな大会?

2-1. ツール・ド・フランスについてサクッと解説

まず初めにみなさんとツール・ド・フランス(TdF)についての共通理解を持ちたいので軽くこのレースについてふれときます。

TdFは、世界最大の自転車競技の祭典。サッカーでいうWorld Cup、アメフトでいうSuper Bowlという具合に、全ての自転車競技好きにとって最大の目標であり、憧れの大会です。

年に一度開催されるこの大会は、一回の大会で35億人のテレビ観戦者、1,200万人の現地観戦者を集めます(コロナ禍での大会を除く)。日本代表がベスト16になった2018年のサッカーW杯の視聴者数は約35億人。世界中で盛り上がるあの大会と同じ数の人がTdFを観戦しているということになります。正直、ワタシはこの記事を書くまでTdFがここまで人気があるとは知りませんでした。(出典:MEN’S JOURNAL | A complete guide to understanding the Tour de France 、REUTERS | サッカー=ロシアW杯の総視聴者数、過去最高の35億人超

写真はコロナが流行する前、2019年大会のスタート地点の様子です。どれが選手でどれがファンか分からなくなってしまうくらいに、わんさか人がいます。まさにお祭り騒ぎです。

ツール・ド・フランス(TdF)とはフランス語で「フランス一周」という意味だそうです。その名の通り、フランス国内を走るコースが中心です。しかし、TdFのレースコースは毎年変わり、近年では近隣ヨーロッパ諸国もコースに含まれていることがあります。TdFは毎年コースが変わるということを踏まえつつ、直近で行われたTdF 2020について詳しく見ていきましょう。(出典:スポジョバ | ツールドフランスの走行距離はどのくらい?選手は1日に約160km走る!?

前編でもお話しましたが、TdFはステージレースに分類されます。全部で21のステージに分かれており、1日1コースを走ります。直近のTdFは2020年8月29日から約3週間に渡り開催され、その間に選手が走破した距離は3,484km東京―広島がだいたい800kmなので、2往復ちょいする感じですかね。距離の長さに加え、高低差もなかなかのもんです。29の山を越え、最大高度は2,034m。場所によっては太ももパンパンやん、なレースです。

(出典:JSPORTS | ステージ詳細

どんな大会なのかいまいちイメージできない、という方は、2019年大会のハイライト動画を載せておくので、チェックしてみてください。

2-2. ツール・ド・フランスの観戦者ってどんな人?

こんなツール・ド・フランス(TdF)に目を付けたのは、我らがNTT。現在、NTTはTdFのテクノロジーパートナーを務めています。このパートナーシップでNTTは、TdFの観戦者の観戦体験を向上させるテクノロジーを開発し、大会に提供しています。NTTは、この一連のテクノロジーをグローバルスタジアムと名付けています。

このグローバルスタジアムがどのように観客の観戦体験を上げているのか、を説明する前にTdFの観戦者についてお話しておきます。いかんせん3週間に渡って3,484kmを走破するレースなわけです。“え?どこで、誰が、どうやって観戦してんの?”って話です。

調べてみると、TdFの観戦者カテゴリーは大きく4つに分けられそうです。順番に説明していきます。

2-2-1. 観戦者カテゴリーA:1つの場所で生観戦

まず1つ目の観戦者カテゴリーは「1つの場所で生観戦」な人々です。サッカーW杯並みに人気のあるTdFですが、特別席を除いて基本的に観戦は無料です。

めっちゃええやん!無料なら行きたいわ!って感じですが、観戦するのも一筋縄ではいきそうにありません。というのもレース開催中は当然ながら交通規制がかけられます。さらに、付近の鉄道駅は封鎖されることもあるそうです。仮に鉄道に乗れたとしても、TdFのコースと駅のアクセスはよくありません。えぇ…じゃあどうやって観戦するの?って思いますよね。↓の写真を見てください。

(出典:freewheeling FRANCE | Watching the Tour de France in person

多くのキャンピングカーやテントが見えます。こういった人たちは、交通規制がかかる何日か前に現地入りし、場所を確保しているわけです。観たいコースを決めて、観戦場所を固定するスタイルですね。

2-2-2. 観戦者カテゴリーB:複数ポイントで生観戦

2つ目の観戦者カテゴリーは、「複数ポイントで生観戦」な人々です。彼らは自転車で移動し、場所を変えながら観戦します。“え?交通規制は?”と思ったアナタ。ワタシもそう思いました。しかし、自転車の祭典というだけあって車に交通規制がかかっている道でも、レースに影響がなければ自転車なら通ってOKな道が多いようです。彼らはこういった道を走って、先まわったり、追いかけたりしながら観戦します。

(出典:YouTube | Cameron Jeffers

2-2-3. 観戦者カテゴリーC&D:時差ナシorアリでTV観戦

ここまでは現地で生観戦な人々のご紹介でした。続いて3つ目の観戦者カテゴリーは、TVで観戦する人々です。冒頭でもお伝えした通り、TdFは世界で35億人が視聴します。この35億人の視聴者がTVで観戦な人々なわけですが、この3つ目のカテゴリーの人達の中でも更に2つに分けられそうです。

まずは「時差ナシでTV観戦」な人々です。ヨーロッパとかアフリカなど、フランスとタイムゾーンがほぼ変わらず、起きてる時間帯に観戦できる人たちですね。

そしてもう1つが「時差アリでTV観戦」な人々です。例えば、アメリカに住んでいる人が生中継を見ようと思ったらだいたい7時~12時と、働いていたり学校のある時間になってしまいます。日本に住んでいる我々が生中継を見るならば、だいたい21時~26時になります。

以上つらつらと書いてきましたが、ざっとまとめるとTdFの観客は観戦場所&時差によって大きく4つ(A、B、C、D)に分類できそうです。

2-3. 観戦者のちょっとした“悩み”を想像する

グローバルスタジアムについて説明する前に、もちっとだけ横道に逸れさせてください。それは上の図のA、B、C、Dの4つの観客が観戦中に抱くであろうちょっとした悩みについてです。この観客のちょっとした悩みがわかってくると、NTTがなぜグローバルスタジアムなるものを開発したのかがリアル感をもってわかってきます。

2-3-1. 観戦者カテゴリーA:1つの場所で生観戦の悩み

まずはA:1つの場所で生観戦する人たち。お伝えした通り、彼らは特定の場所に前乗りして応援する人たちです。端的に言うと、この人たちは選手たちを“待っている”人たちなんです。するとこんな悩みを抱えているのではないでしょうか。

選手が通過前は“いつココを通過するかな?”とか“待ってる間、ヒマだ”って思ったり。あと、選手が通過した後はその後のレース展開が気になったりするでしょう。なにせ1つのポイントで観戦し、選手を見れるのは長くて数分なわけなので。

2-3-2. 観戦者カテゴリーB:複数ポイントで生観戦の悩み

次はB:複数ポイントで生観戦する人たちの悩みはどうでしょうか。彼らは選手たちを先回りしたり、追いかけたりして観戦します。ということは一番気になるのは“選手は今どこ走っとるんやろか?”ではないでしょうか。自分たちが先回りしたと思っても、選手がすでに通過してたとしたら、目も当てられません。あとは次の観戦ポイントに自転車で移動中にレース展開が変わってないかも気になる点かと思います。それと自転車で移動する際に、その移動ルートはどのくらい走りやすいのか、なんかも気になる点かと。1kmだから余裕っしょ、って走り出したらエグい坂道だった、みたいなことは避けたいはずです。

2-3-3. 観戦者カテゴリーC:時差ナシでTV観戦の悩み

続いてC:時差ナシでTV観戦する人たちです。彼らは現地観戦の人に比べると、快適な環境で優雅に観戦しています。ビールでも飲みながらTVを観ている人も多かろうかと。この人たちはTV観戦なので、当然ながらレースのリアルはわかりません。なので、“選手つらそうだけど、あのコースって本当にしんどいやろか”とか“選手はどのくらいのスピードで走ってるのかな”という疑問を抱えているかと。あと、駅伝などの長時間のスポーツを観たことある人はわかるかと思いますが、“飽きてきたな”って気持ちもあるかと思います。中には、“ビール飲んじゃったしレース展開も単調だからちょっと寝ちゃおかな”って観戦者もいそうですね。

2-3-4. 観戦者カテゴリーD:時差アリでTV観戦の悩み

そして最後にD:時差アリでTV観戦する人たちです。この観戦者たちは日本とかアメリカで眠い目をこすりながらTV観戦する人たちです。ただ、仕事や学校があるのでTVをじっくり観れる人は少ないってことは容易に想像できます。なので、仕事の合間とかに順位とかレース展開をサクッと知りたい人が多いのではないでしょうか。

3. NTTが開発したグローバルスタジアム:全ての観戦者を夢中に!

ここまで、ツール・ド・フランス(TdF)がどんな大会なのか、そしてどんな観戦者がいて、どんな悩みを抱えていそうなのかについて、お話してきました。ではでは、やっとこさ我らがNTTグローバルスタジアムについて語っていきます。

3-1. グローバルスタジアムのインプットデータ

まずはグローバルスタジアムというサービスを作る“元”となるインプットデータについてです。NTTがTdFに提供するグローバルスタジアムは4つのインプットデータを加工して作られています。そのインプットデータとは、選手の「スピード」「距離」「時間」「位置」です。どのくらいのスピードで走ってんの?とか、いまあの選手はどこにいる?みたいな情報ですね。これらの情報は選手のサドルの下に取り付けられた↓のようなデバイスを通して取得されとります。しかもこのデータ、毎秒単位という細かさで取得されているんです。

3-2. インプット情報から作られる5つのサービス

次は、これらのインプットデータを加工し、どのようにアウトプットしてサービスにしているのかっちゅう話です。この4つのインプットデータから作られるサービスは5つあります。それが、「Race Center」、「Broad Casting」、「Twitter」、「AR app」、「Fantasy Sports」っちゅうものです。この5つのサービスが観客の観戦体験を激上げしているわけです。

3-2-1. あらゆるデータにアクセスできるRace Center

まず1つ目のサービスである「Race Center」からご紹介します。これは一言でいうと総合データプラットフォームです。人々は、スマホアプリもしくはWebで閲覧することができます。このプラットフォームには、上で紹介したデバイスから取得する情報に加え、あらゆるデータが集約されています。例えばコースのある地点に関する情報です。標高、気温・風の強さなどの気象状況、傾斜、ゴールまでの距離といった情報がすぐに確認できます。

(出典:Tour de France | Race Center

当然ながらレースそのもののデータも用意されています。選手の現在地、ステージごとのランキング、タイム、レース予想、レース解説、選手の目線から見たレースコースなどを見ることができます。ざっくり言っちゃうとRace CenterをチェックすればTdFの状況が全て把握できるくらい豊富な情報が揃ってるわけです。

(出典:Tour de France | Race Center

このデータプラットフォームによって観客の悩みが軽減され、観戦体験が向上するってのは容易に想像できるかと。例えば“A:1つの場所で生観戦する人たち”や“B:複数ポイントで生観戦する人たち”が気にする選手の現在地。選手の位置情報が提示されるので、選手の現在地が気になってしゃーない観客はすごく助かります。あとはレースの展開なんかもすぐに反映されるので、現在の順位を気にする観客にはありがたい情報ですね。それとコースの状況を知りたい観客は、傾斜、気候状況なんかも確認できます。

3-2-2. TVの映像をよりリッチにするBroad Casting

2つ目のサービスBroad Castingは、テレビ放送へのデータ、ビジュアル提供です。選手個人のスピードなどの数値データやコースの全体感などのビジュアルデータを提供しています。TVの映像のみだと選手が必死に頑張っている様子は伝わります。しかし、選手がどこで、どれくらいのスピードを出して頑張っているのか、まではわかりません。こういった情報を文字にしてテレビ放送上にプラスして、より情報リッチにするのが、このBroad Castingというサービスなわけです。

これなんかは時差アリ・ナシに関わらず、主にTVで観戦する人の観戦体験を高めますね。じっくりTV観戦する人に映像以上の情報を伝え、没入感に浸らせることで、TV観戦からの離反を少なくする効果があります。

3-2-3. 重要ポイントをサクッと伝えるTwitter

3つ目のサービスは、@letourdataというTwitterアカウントです。こちらのアカウントでは観戦者がサクッと知りたいであろう情報を高頻度で配信しています。例えば、選手のプロフィールやら走行スピード、選手間の比較、トップ集団との距離、コースの気候状況、なんかがビジュアル化されて配信されます。

↓の図はこのアカウントで配信された情報をいくつかピックアップしたものです。上段左は2020大会で、総合優勝を果たしたタデイ・ポガチャル選手の能力をグラフ化した投稿。下段の真ん中は、ステージ16でトップスピードを記録した選手が、どんな高度のコースの、どの地点でトップスピードを記録したのかを表しています。これを見るとステージ8では最高時速97.1kmで走行していた猛者もいたようですね。もはや車やん、なスピードです。

(出典:Twitter | TwitterTwitterTwitterTwitterTwitterTwitter より作成)

A:1つの場所で生観戦する人たちは選手を待っている間や通り過ぎたあとに、このアカウントをチェックすれば、レース展開がだいたい把握できますね。

あと、このTwitterアカウントは上で紹介したRace Centerを補完するものにもなっていそうです。Race Centerは包括的なデータプラットフォームであるものの、いちいちタブをクリックしないと欲しい情報にたどり着けません。その点、このアカウントでは重要ポイントに絞ってダイジェストで教えてくれるって強みがあります。

ということは、スマホやらTVをじっくり見ることのできないB:複数ポイントで生観戦する人たちD:時差アリでTV観戦する人たち、にとってはありがたいサービスですね。

3-2-4. リアルを伝えるAR app

4つ目のサービスは主にスマホ用アプリとして提供された「AR app」です。正式名称はLe Tour VIP 3D Trackerと言います。実はこのアプリ、その名の通りVIP限定に作られたアプリとなります。VIPとして登録された人はアクティベーションコードをもらい、それを入力すると使えるようになるっちゅう仕組みです。

このアプリの特徴は、またしてもその名の通り、3Dで選手たちが登っている山を見ることができます。彼らがどれほど険しい山々を登っているのかわかることで、リアル感を持って観戦ができるってことですね。また気温、風速、傾斜なんかの情報もわかります。さらに、TdFのコースはその景観の素晴らしさからも人気があります。このアプリを使えば、家からも景色を楽しむことができるというわけです。

このアプリはTVで観戦しているVIPによりリアルなコース状況を伝えられますね。VIPが「ずいぶんと傾斜の激しいコースを走っとんな」とか「ん?いますごく美しい景色が映ったぞ」と思ったらこのアプリを開くわけです。すると、そのコースがどれほど山の中なのかとか、どんな景色なのか、が確認できるわけですね。

3-2-5. TdFと全ての観戦者をつなぐFantasy Game

最後にご紹介するサービスは、「Fantasy Game」というサービスです。

このゲームは、TdF開催中だけしかプレーできません。遊び方は簡単。プレーヤーは、TdFに参加している選手から8選手を選んで自分の自転車チームをつくります。選んだ選手がTdFで残した成績をもとにプレーヤーに得点が入ります。最終的にポイントが高かかったプレーヤーが賞品をゲットできる、というゲームです。Fantasyって“空想の”って意味で、自分で架空のチームを作って遊ぶゲームですね。

自分のチームを作って戦うという点では、サッカーゲームの「サカつく」に似ていますよね。ただ、Fantasy Gameはレースの状況がリアルタイムでゲームに反映されます。なので、TdFからも目を離せなくなるのです。自分が登録した選手が好成績を残せば、自分の架空のチームの成績も上がるっていう仕組みなんです。ここがこのゲームのおもしろいポイントです。

このゲームは、“TdFから離反しそうになった観客をつなぎとめるサービス”ですね。例えば、選手を待っている間、ヒマだなぁ…と感じているであろうA:1つの場所で生観戦する人たち。また、TV観戦に飽きたかもぉ…、と感じるC:時差ナシでTV観戦する人たちですね。持て余す時間やマンネリ化した時間に開いてもらうことで、もう一度TdFに夢中になってもらうサービスってことです。

さらに、このサービスは世界中の観戦者をつなげるという意図もあったと思われます。みなさんいま一度5つのサービスの総称を思い出してみてください。グローバルスタジアムです。屋外で行われる長距離レースに”スタジアム”ってなんか違和感ありません?ここがポイント。実は、このグローバルスタジアムは「レースをつなげ、世界をつなげる」という意味合いもあるのです。(出典:NTT | Doubling down on digital to bring fans closer to the Tour de France 世界中で、それぞれ違った方法で観戦する人々に、ゲームという共通に楽しめる場所を提供することで、世界中にいるTdF観戦者をつなげる。Fantasy Gameには観戦者同士をつなげる役割もあるのです。

3-3. 5つのサービスと観戦者の悩みを体系的に整理

我らがNTTグローバルスタジアムの5つのサービスと、それらがどのように観客の観戦体験を上げるのか、について書いてきました。上で解説した図にちょいと書き足すと↓みたいなかんじですかね。インプット情報を加工して、様々な端末を通じて観客の観戦体験を上げているってことがおわかりいただけると、これ幸いです。

さらに、5つのサービスの機能のうち、観戦者の悩みに関連性が強そうなものだけマッチングしてみました。すると↓のような感じで整理できそうです。こうやって見てみると全ての観戦者の何かしらの悩みが5つのサービスの何かしらの機能によって解決・軽減されているってのがわかります。この色のついたスタンプが多いほど、観戦者の観戦体験が上げられてるってコトですね。

4. おわりに

いかがでしたでしょうか。NTTのグローバルスタジアムがかなりイケてるってことがおわかりいただけたかと。

実はNTTは2017世界トライアスロンシリーズ横浜大会にて同じようなトラッキングシステムの実証実験を実施しています。今回ご紹介したTdFのグローバルスタジアムはそれをさらに進化させたものですね。

ある企業の担当者がこんなこと言ってました。

「広告露出のためだけにスポーツにスポンサーすることはしない。

弊社の新しいビジネスを創るためでなければスポンサーをする意味がない」

こういったご意見、最近よく耳にします。確かに広告露出のためだけにスポーツにスポンサーするのは、コスパがよろしくない場合もあります。せっかくお金を入れるならば“事業創造”という見返りをもらいたい、ってことですね。変化が激しい時代で、高い新陳代謝が求められるこれからの企業の切なる思いだと思います。

NTTの場合はトライアスロンで試してみて、TdFでその技術力を完成形にまで高めました。あとはこのパッケージを他のスポーツ、団体に売り込んでマネタイズしていくと考えられます。TdF以外のワールド・ツアーやら、プロシリーズ、コンチネンタルサーキットなんかにも導入し得るかと。

あとはデバイスをどのように取り付けるかって問題はあるものの、比較的長時間、長距離で行われるマラソンとか駅伝なんかも可能性がありそうです。あと熱狂的なファンの多いアドベンチャーレースなんかもアリですね。もちろんトライアスロンも。
さらに飛躍すると、一部の機能は一般のサイクリスト、マラソンランナーや、登山客、旅行客なんかにも使えるツールへの発展余地もありそうです。

冒頭でも言いましたが、NTTのように己の技術力・製品力に磨きをかける場としてスポーツの現場と共創する、って事例を見ると我々は唸らずにはいられません。スポンサーした分かそれ以上のビジネス機会(横展開可能性、大会の収益機会増大、一般ユーザーからの収益機会増大)作れてるなぁ、と。

今年2021年から開幕したJCLを始めとして、日本のロードレースシーンもこれから盛り上がっていくにあたって、今回ご紹介したNTTのような事業を共創していくような動きも活発に見られると良いな&市場がもっと大きくなっていくと良いなと切に願っています。

というわけで、今後もこんな事業共創を目指してスポーツ×企業がコラボってるぜ~な事例をご紹介していきますので乞うご期待!