スポーツコンサルをしてるとたまにこんな声を聞きます。

「スポーツチームにスポンサーしてスポーツマーケティングするくらいなら、テレビCM作ったほうがいいんじゃない?」

「そもそもスポーツマーケティングとテレビCMの違いってなによ?」

同じような金額を投じるぐらいなら手っ取り早くテレビCM打とうぜ、みたいな気持ち、すごくよくわかります。

というわけで今回は我々の考える「スポーツマーケティングとテレビCMの違い」について考えていきたいと思います。

スポーツマーケティングにはCSRのように社会的な価値を発信できるという強みもありますが、今回は企業の利益に直接的に結びつく、販促・広告的価値に絞って、テレビCMと比較していきたいと思います。

今回の記事は小学校から大学まで毎月ザ・テレビジョンを購入し、2週間先のテレビ番組まで把握していたザ・テレビっ子のサセが担当いたします。それではまいりましょう!

1. テレビのおかれている現状:
他のメディアと比べた上で、テレビのおかれている状況についてご説明します

本論に入る前に、全体のメデイアの中でのテレビCMのおかれてる現状をサクッと確認しておきましょう。ここではみなさんに、「テレビCMっていまそんな感じなんだぁ」ってことがわかってもらえればOKです。

(出典:メディアレーダー|日本の広告費の推移グラフ(2019年まで)電通の調査

上のグラフは企業が投じる広告費の推移を表したものです。オレンジの線がテレビCM広告費ですが、2016年を境に徐々に減ってきています。そしてこれとは逆にずっと増え続けているものがあります。インターネットの広告費です。

みなさんも思い当たる節があるかと思いますが、Yahoo!の右側に出る広告やYouTube広告など、あらゆる企業がネット広告を打ち出しています。若者のテレビ離れなど言われますが、たしかにテレビではなく、スマホでFacebook、Instagram、Twitter、YouTubeなどで時間を消費する人が増えてきています。

これに応じて、企業もより多くの人の目に触れる媒体として、テレビではなくインターネット広告に目をつけだしているというわけです。

元々テレビっ子だった私からすると信じられないような現状ですが、ネットコンテンツが爆発的に充実する昨今では避けられないことなのかもしれません。

2. スポーツマーケティングとテレビCMの情報伝播の違い:
情報が拡散される構造をサラリと説明します

では次に、スポーツマーケティングとテレビCMがどのように情報を拡散するのか、について話しておきたいと思います。このパートについても、みなさんが「ほぅほぅ」とより立体感をもって2つの媒体への理解を深めてもらうためのものなので、頬杖でもつきながらお読みいただければと思います。

まずはテレビCMについて。

テレビを見る人が減っているとはいえ、やはりその拡散力は大きいものがあります。下の図のように、全方位に不特定多数の人に情報を届けるという意味ではテレビCMのメディアパワーは絶大です。

ただし、よほどバズるような要素を持たない限りCMでみた内容をそのまま他人に共有するということは考えにくく、新聞・雑誌、SNSで2次的、3次的に拡散されることはなかなかありえません。

一方、スポーツマーケティングはどうかというと、情報の拡散のされ方が重層的、といえます。

下の図は スポーツマーケティングの情報拡散を表した図ですが、スタジアムでの選手のパフォーマンスをコンテンツとして3段階の露出が発生することがわかります。

1次露出ではスタジアム内外の看板やユニフォームのバナーなどにより、試合を観戦する人に向けて社名や製品・サービス名が発信されます。

2次露出ではスタジアムでの出来事がニュース・記事化され、テレビのみならず新聞、雑誌などの紙媒体、さらにネット記事などのマスメディアを通して発信・拡散されます。

3次露出では、2次露出で発信されたニュースがツイート、Facebook投稿などに姿を変え、SNSを通じて全世界に向けて発信されます。

このようにテレビCMは全方位に不特定多数に発信するものの、1次伝播で完結する。

一方、スポーツマーケティングは1次、2次、3次と情報が重層的に伝播する、という違いがあることを知っておいてもらえればと思います。

3. 「誰に」、「何を」、「どのように」で考えるスポーツマーケティングの特徴:
スポーツマーケティングの有効性に直結する4つの特徴についてお話しします

ここまで、「テレビのおかれている現状」と「情報伝播の違い」について話してきました。みなさんの頭の中になんとなく基礎知識が溜め込まれつつあることを願いながら、テレビCMとスポーツマーケティングの違いについてもう少し深くツッコんでいこうと思います。

違いを明らかにするために、ちょっとしたフレームワーク、「誰に、何を、どのように」を使って考えてみたいと思います。

まず「何を」ですが、これは広告主である企業が広告に掲載・露出するものであり、企業名や製品・サービス名となります。

違いが出るのは「誰に」「どのように」です。この2つについてテレビCMとスポーツマーケティングの違いを掘り下げていきます。

3-1. 「誰に」の違い

企業がスポーツチームにリーチする理由として様々ありますが、「スポーツチームの抱える熱狂的なファンにリーチ(知ってもらったり、買ってもらったり)したい」というのが一番の理由ではないでしょうか。

スポーツチームの抱えるファンのペルソナ(顧客像)は、ファン属性調査などから分かる通り、年齢、性別、居住区、家族構成、趣味嗜好、行動履歴などから、かなり明確に定義できます。

例えば、広島東洋カープファンであれば、「広島県を中心とした中国地方居住者」、「カープ女子などの女性層」、ゴルフファンであれば、「男性」、「収入高め」、「車を持っている」など、ファン属性を絞り込むことができます。

このようにスポーツマーケティングでは、企業はファン属性を把握し、それに最適なアプローチ策がとれるため、広告の無駄打ちを少なくすることができます。要はターゲティングがしやすいってことです。

一方、テレビCMはというと、番組によって視聴者属性に違いはあるものの、見ている人のペルソナに大きな偏りはなく、広く浅く発信されているため、ターゲティングはスポーツマーケティングほど易しくはありません。

3-2. 「どのように」の違い

「どのように」については更に細かく、①変容性②ストーリー性③ナチュラル感
という3つの要素に分解して説明します。

3-2-①. 変容性について

まずは「①変容性」について。テレビCMは、当然ながら15秒程度の動画として視聴者に発信されます。

一方で、スポーツマーケティングは、あらゆる露出に形を変えて、人々に発信されます。上で述べた1次、2次、3次というのはこの変容性の1つですが、他にも例えばスポンサーDAY、スタジアム外の販促活動などがあります。

つまりスポーツマーケティングでは、企業は自分たちの社名や製品・サービス名をファンに届けるために、あの手この手を講じることができるのです。もちろんこの「あの手この手」をするためにはスポーツチームと相談が必要ですが、チームによってはけっこう柔軟に対応してくれます。

また今流行りのSNSやオンラインで配信するコンテンツを作り、配信することで、ファンのリアクションが見えるようになります。いわゆる「双方向性」というやつです。SNSであればそのコンテンツにどのくらい「いいね」がついたのか、オンラインイベントであればどのくらいのファンが参加し、どんな表情をしているのかがわかり、次の改善につなげることができるのです。

一方、テレビCMは一方向の15秒動画であるため、それをみた人がむせび泣いているのか、激怒しているのか、などの反応を確認することはできません。

このように、テレビCMは一度作った15秒動画を改変することはできませんが、スポーツマーケティングではスポーツチームと相談し、オンライン・オフライン、イベント、ロゴ露出、ZOOM対談、アプリ作成など、手を変え品を変えファンへリーチすることができるんです。SNS、オンラインで配信すれば双方向性なんていうオマケもついてきます。

3-2-②. ストーリー性について

次は「②ストーリー性」です。

スポーツの結果は常に予測不能で、ドラマ性を内包しています。

テレビCMを制作する際、視聴者の感情に訴えかけるストーリーを構築しようとクリエイターが心血を注ぎます。

しかし、スポーツマーケティングにおいては試合そのものが心揺さぶるストーリー性のあるノンフィクションドラマなんです。

街行く人に「スポーツで感動した場面は?」なんて聞いたら、誰しもが1つは思い浮かぶシーンがあるのではないでしょうか。

これを書いている私も、アテネ五輪にて日本体操男子が金メダルを獲得した瞬間を思い浮かべちゃってます。

「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ~~!」の実況と、ゆずの「栄光の架け橋」が頭の中で鳴り響いてます。

このように人々はスポーツを見ると、激しく上下する心理的な経験をします。これはテレビCMでは作り出せない世界観です。

このハラハラ、ドキドキや咽び泣くような感動の渦の中に、自社名をちゃっかり紛れ込ませることで、見る人の心の中に深く&時にポジティブに、残る広告を打つことができるのがスポーツマーケティングなのです。

キング牧師とともにアメリカで公民権運動に貢献したマヤ・アンジェロウは

” People will forget what you said, people will forget what you did, but people will never forget how you made them feel.”
(人は聞かされたことや他人にしてもらったことはすぐ忘れてしまうが、感じさせられたことは決して忘れない)

とおっしゃっています。

どの時代でも、人は心理的体験が伴った出来事は忘れない、ということではないでしょうか。

3-2-③. ナチュラル感について

次に「③ナチュラル感」です。「ナチュラル感」とは要は「邪魔しない」ってことです。

ドラマやバラエティを途中で遮り、視聴者に強制的に15秒動画を見せるのがテレビCMです。「主人公とヒロインがいよいよ結ばれるでぇ!」と思いながらテレビを食い入るように見ていたら、CMが入って少し萎えた、という経験は誰しもがあると思います。

このスタイルは、“インタラプション(≒妨害)マーケティング”と揶揄されてたりもしますが、人々のドラマを観る、という行動を途中で遮り、広告するのがテレビCMなのです。

一方、スポーツマーケティングでは人々の観戦という行動をインタラプトすることなく、企業名を露出させることができます。例えば、看板・ユニフォーム広告、ネーミングライツはその最たる例で、極めてナチュラリ~にスタジアム内に企業名をなじませ、人々の目に触れさせることができます。

ここまでお読みいただいていかがでしたでしょうか?みなさんが、テレビCM、スポーツマーケティングの特徴について、「ほぅほぅ」と思っていただければ幸いです。

ただ、ここまで読んできて、

「概念だけ言われても具体的な事例がないといまいちピンとこねーわ」

「考え方とかもう分かったから、具体的なアクションにつながる情報くれよ」

というみなさんの声が私の頭の中でこだましています。

というわけで後編では上に書いたような特徴を活かしたスポーツマーケティング事例をいくつか紹介したいと思いますので、ステイチューンでお願いします。