2021年4月11日、松山英樹選手がマスターズで優勝し、日本人として初のメジャー制覇を遂げました。松山選手のマスターズ優勝の熱狂が冷めやらぬ6月。またしても日本人選手によるビッグニュースが飛び込んできました。日本とフィリピンの二重国籍を持つ笹生優花選手が19歳で海外メジャー「全米女子オープン」を制したのです。
日本人ゴルフ選手がこんな世界での活躍を見せる中、こんなふうに思われる企業担当者も多いかと。
「ゴルフへのスポンサー考えたいなぁ。
でも団体とかツアーとか全体像がようわからんわぁ」
というわけで、今回の記事は日本のゴルフ市場、競技人口、スポンサー対象となる主体、なんかについてざっくり整理しとこうと思います。
「ゴルフ業界のスポンサー考えてみたいな~」って人が最初に読む記事、になればと思います。
では参ります!
目次
1. 日本のゴルフ市場ってどんなかんじ?
1-1. 市場はどのくらい大きいの?どう変わってきてる?
まずは、日本のゴルフ市場の規模感についてお伝えしていきます。ゴルフ関連でどのくらいのお金が動いているのでしょうか。
↓のグラフは、ゴルフ用品、ゴルフ場、ゴルフ練習場に分けたゴルフの市場規模推移となります。全体的にみると、日本のゴルフ市場は縮小傾向にあります。特にゴルフ場は、ピーク時の約1.7兆円から、2018年には0.8兆円と約半分になっています。ゴルフ用品とゴルフ練習場は微減って感じですかね。
ただ、2018年の3つのカテゴリの合計市場規模は1.3兆円ほどあります。スポーツ基本計画では2025年にスポーツ市場を15兆円にまで引き上げようとしています。なので縮小傾向にあるとはいえ、現時点で1.3兆円を稼いでいるゴルフ市場は決して小さくない市場と言えそうです。(出典:スポーツ庁 | 第2期スポーツ基本計画)
1-2. 競技人口ってどのくらいいるの?
では次にどのくらいの人がゴルフをプレーしているのでしょうか。↓のグラフは、日本で2009年~2018年の間にどれだけの人が、ゴルフ場(コース)or練習場でゴルフをしたかを表したものです。
長期的に見るとゴルフ参加人口は減少傾向にあるものの、2016年からは少しずつ回復しています。2018年時点で、ゴルフ場にてゴルフに参加した人は670万人。ゴルフ練習場は660万人。だいたい日本人口の20人に1人がゴルフをやっているとなると、これまた決して少なくない競技人口です。
2. 日本のゴルフ界の主要団体:メインどころは4つ!
ここまでで「市場&競技人口ともに減少傾向にあるものの、決して小さくはない」という日本ゴルフ界の特徴がおわかりいただけたかと。
ただ、ゴルフ人気はなんとなくわかっても、具体的に国内ゴルフ業界の全体像が分からないって方も多いかと思います。その理由の1つとして、どんな団体が、どんなことをしているのか、がようわからんってのがあると思います。というわけで国内ゴルフ業界の主要団体について解説してみたいと思います。
日本のゴルフ界には主に4つの中央団体があります。日本ゴルフ協会(JGA)、日本ゴルフツアー機構(JGTO)、日本プロゴルフ協会(PGA)、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)です。
日本ゴルフ協会は、アマチュア大会の開催、オープン大会というアマチュアとプロの区別がない大会の開催や、日本代表選手の支援などの事業を行っている団体です。国際ゴルフ連盟(IGF)の理事も務めており、ゴルフを通じた国際交流事業も行っています。
日本ゴルフツアー機構は、国内男子プロゴルフのツアートーナメントを運営している団体です。ツアートーナメントは簡単にいうと、複数の大会を1つにまとめたものです。日本ゴルフツアー機構が運営しているツアーには、国内男子ツアーとAbemaTVツアーがあります。
日本プロゴルフ協会は、日本男子プロゴルフを統括する団体。プロゴルファー(トーナメントプレーヤー)になるための資格認定や、ゴルフ指導者(ティーチングプロ)の資格認定などの事業を行っています。また、国内男子ツアーの一部の大会を主催しています。
日本女子プロゴルフ協会は、日本女子プロゴルフを統括する団体です。国内女子プロゴルフのツアートーナメントの運営、プロゴルファー資格認定、ゴルフ指導者資格認定などの事業を展開しています。
ざっくり業務範囲をまとめると↓みたいなかんじですかね。現時点のスポンサーで言うと、日本ゴルフ協会にはNEC、日本ゴルフツアー機構にはANAやSMBCモビット、日本女子プロゴルフ協会にはメルセデス・ベンツや明治安田生命などが名を連ねています。
なお、過去に米国のLPGA(Ladies Professional Golf Association:全米女子プロゴルフ協会)と協力して「ゴルフ大会xビジネスサミット」を開催したっていう事例をご紹介しました。女性スポーツの特徴を活かした医療品メーカーの取組み事例です。気になる方はぜひ↓から読んでみてください。
3. 国内ツアーについて解説
では、ここからは、上に紹介した団体が行う男女の主要ツアーについてご紹介します。どんなツアーがいつあって、どんな企業がスポンサーしているのか、についてお話していきます。
3-1. 主催、協賛、協力、後援ってなんぞ?
ツアーの説明の前に少しだけ横道にそれさせてください。ゴルフへのスポンサーを検討するときに、主催、協賛、協力、後援などの違いがようわからんってことがあると思います。なので、ここではまずこういった言葉の定義を確認しておきます。
まずは主催。これは大会を立案・企画することを指します。協賛、協力、後援は大会ができてから何かしらの形で関わるのに対し、主催者はイベント自体を企画する主体です。なので、事故が起きた場合などの責任は主催者が負うことになります。主催者が複数に渡る場合は共催なんて言い方をします。
そして次が協賛。これはスポンサーです。金銭的な支援がメインですが、物的・サービスなどの提供をする団体もあります。ちなみに、物的・サービスの協賛提供をVIK(Value-in-Kind)と呼んだりもします。協賛のなかでも協賛金の大部分を提供するコトを特別協賛と言います。
次に協力ですが、資金面と言うよりも場所などの提供を行うことを言います。協力団体に名を連ねるのはゴルフ場、ホテルなんかが多かったりします。
そして最後に後援。これは社会的信用を付けるための名義貸し、って意味合いが強いようです。なので大会が行われる自治体や新聞社など公益性の高い団体が名を連ねます。
3-2. 国内男女ツアーのスケジュール・主催者・スポンサー総まとめ
では主催、協賛、協力、後援の違いがわかったところで、本論に戻ります。
↓は2019年の国内男子ツアーと国内女子ツアーの全大会です。2020年はコロナの影響で多くの大会が中止or延期になっているので、全体像を理解していただくために2019年のツアーをまとめています。そして、大会名の下には上で整理した主催者を、その下には協賛者(スポンサー)を記載しています。
この記事を読んでる方の中には、日本のゴルフスポンサーの機会に多少なりとも興味のある方がいらっしゃるかと思います。
↑を見て、「ほうほう。あの大会はあの会社が主催してるのか。協賛したらお近づきになれるかな?」とか「競合のあの会社はあの大会にスポンサーしてるのか。こっちの大会は入り込む隙がありそうだしスポンサー検討してみよっかな」なんて思いを巡らせていただければと。
3-3. 国内メジャー大会ってなんぞ?
実は上で紹介した国内ツアーの中でも、権威のある大会はメジャー大会と呼ばれています。
男子の国内メジャー大会は、日本ゴルフツアー選手権、日本プロゴルフ選手権、日本オープンゴルフ選手権競技、ゴルフ日本シリーズの4つ。
女子の国内メジャー大会は、ワールドレディスチャンピオンシップ、日本女子プロゴルフ選手権大会、日本女子オープン選手権、LPGAツアーチャンピオンシップの4つです。(出典:ゴルフの学校 | ゴルフのメジャー大会に詳しくなってゴルフ観戦を楽しもう!)
↓に国内メジャー大会とその他国内ツアー大会の違いをみるため、平均入場者数と優勝賞金額の平均を比較してみました。男子に関しては、国内のメジャー大会とその他ツアー大会ではそこまで違いがありません。
女子は平均入場者数と優勝賞金額ともに、メジャー大会とその他ツアー大会で倍近くの差があります。国内メジャー大会の平均入場者数は33,043人、その他ツアー大会は15,724人。メジャー大会の方が2倍以上の入場者数を集めています。優勝賞金も同様に、国内メジャー大会が3,000万円、その他ツアー大会が1,600万円と倍近い金額になっています。国内ツアーを戦う女子選手にとって、国内メジャー大会で勝利することは名誉なだけでなく、多くの観客の前で戦う緊張感、得られる賞金の点からも他のツアー大会とは一線を画しているようです。
3-4. 国内ツアーの人気は?
最後に国内ツアーの人気についてお話していこうと思います。要は、「国内ツアーってどれくらいギャラリーが集まるん?」って話です。
↓のグラフは2010~2019年の10年間の、国内男子ツアー、国内女子ツアーの年間合計ギャラリー数の推移です。これを見ると男女の観客数は対象的ですね。2012年に女子が男子の入場者数を超えました。それを境に男子ツアーと女子ツアーの観客数は差が徐々に大きくなっていき、2019年時点では女子ツアーの年間合計ギャラリー数は70万人弱と倍近くの差が開いています。
ちなみに、少し前にPGA(Professional Golfers’ Association)ツアーにスポンサーして、富裕層へリーチしたっていうHSBCの事例をご紹介しました。ゴルフの特性を生かして富裕層との関係構築を上手く図った事例です。こちらも興味ある方はぜひ!
4. 日本にはどんな選手たちがいる?そのスポンサー企業は?
ここまで日本ゴルフ界の主要団体とツアーについてお話してきました。
ただ、中には団体やツアーよりも選手個人にスポンサーしたいなって考えている企業さんもいらっしゃるかと。
というわけで、①日本国籍を持つゴルフ選手で、②2020-21年の日本国内ツアーで得た賞金ランキングにおいて、③10位以内にランクインする選手に絞ってご紹介します。
↓は賞金ランキング10位以内の選手、その所属、獲得賞金、スポンサー企業をまとめたものです。コロナによって2020年の大会の多くが中止になったため、「賞金獲得金額」は2020年と2021年シーズンの合計値になっています。男子の方が2020年の大会の多くを中止しているようなので、女子の方が圧倒的に賞金金額が大きいという状況になっているみたいです。
「所属」を見てみると、男子は10人中3人がフリー。女子選手には1人もフリーはおらず、全員に所属先があります。
プロゴルファーといえば、チームスポーツと違ってどこかに所属はせず、賞金&個人のスポンサー契約で生計を立てているイメージですよね。この人たちのことをフリーといいます。一方の「所属」は、企業と契約をして支援を受けるというところまではフリーと同じです。しかし、企業に「所属」するということは企業の一員になるということ。大会で名前をコールされる際や、メディア出演の際には所属先が明言されます。また、「所属」は3年以上の長期契約がほとんどで、スポンサー契約は単年契約と契約期間にも違いがあるそうです。(出典:ゴルフダイジェスト | 「正直、賞金だけではカツカツなんです」女子ツアーのスポンサー事情)
また、女子Top10選手を見ると若い選手が目立ちますね。10人中9人が10~20代の選手になっています。こんな選手の中から、渋野日向子選手のように大化けする選手を探してみるってのもいいかもしれないですね。
ちなみに、ちょっと前に2019年AIG全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手にスポンサーしたピンゴルフジャパンとBEAMS GOLFの事例を取り上げました。スポンサーした結果、具体的に何%売上が増加したのかについてもご紹介しています。気になる方はぜひ↓から読んでみてください。
5. おわりに
いかがでしたでしょうか。ゴルフにスポンサーすると言っても、団体、ツアー、選手の3つがあり、それぞれに違ったスポンサーが付いていることがおわかりいただければ幸いです。
「正直、賞金だけではカツカツなんです」女子ツアーのスポンサー事情にもあるように、賞金だけではなかなか生活していけないっていうプロゴルファーも多くいるようです。この記事を読んでゴルフの全体像がわかり、自社にメリットのあるスポンサーの形を考えたい!と思っている企業さんの検討が少しでも前に進めば幸いです。
企業の支援によって出場できる大会が増え、第2、第3の松山英樹、笹生優花になる選手が出てくることを願うばかりです。そのために、ゴルフにスポンサーすることで企業がメリットを獲得している事例を今後もご紹介していきます。ゴルフ界がますます発展することを願いながらこの記事を終わります。