日本時間2021年4月12日早朝、ゴルフの松山英樹選手がアジア人として初めてマスターズを制しました。

「日本人が招待を受けて85年、ついについに、世界の頂点に松山は立ってくれました」

実況アナウンサーは涙声になりながらこう語りました。“マスターズで日本人が優勝するなんてムリだ”。小さい頃からゴルフ好きの父親からこう言い聞かされてきたワタシからすると松山選手の優勝は非常に感慨深いものがありました。そして解説の中嶋常幸さんの「ほんとうに良かったぁ」という震える声を聞いた時には涙腺が崩壊していました。

松山選手のマスターズ優勝にちなんで、というわけではありませんが、今回の記事はゴルフについてです。

SPOVAでは毎日せっせと国内外のスポンサーアクティベーション事例を調査、ストックしています。2003年くらいから直近まで約2万件以上の事例を社内データベースに溜め込んでいます。

我々はこのデータベースを使って、

「どんなスポンサーアクティベーションの効果が大きかったか?」

「海外のスポーツ先進国では企業がどのようなスポーツの使い方をしているか?」

「スポンサー企業の業種、スポーツ競技、地域といった分類ごとに、スポンサーの取組に特徴はあるのか?」

「A企業と、競合のB企業のスポンサー事例を比べると、SNSでの反響の違いはあるのか?」

などの分析を行っています。

今回の記事はワタシがこのDBの海を泳いでいて見つけた事例の中から、これぞ!と思うユニークな企画3つをピックアップしてご紹介します。広告露出や冠スポンサーになるだけでなく、知恵を絞って企画化した世界のゴルフ界でのスポンサー施策を取り上げますので、是非ご参考にして頂ければと思います。

それでは参ります!

1. SPOVA DB(データベース)とはなんぞ?

おもしろスポンサー事例(ゴルフ編)をご紹介する前に、このデータベースについてちょろっと説明しておきます。

このデータベースの機能をカンタンに表現すると、「国内外のスポンサー事例を集約、分析したシステム」です。名付けて(仮)SPOVA DB(データベース)。現時点で、名前は仮称です。もしかしたら「名前だっせぇ」と思った方がいらっしゃるかと思います。繰り返します。名前は仮称です。それに現状は社内システムなんす。

ところで、みなさんも過去にこんなこと思ったことないでしょうか。

「あの会社はどのチームにスポンサーして、どんなことやってんの?」

「海外の有名クラブはどんなスポンサー企業を獲得してんの?」

でも同時にこうも思ったのではないでしょうか。

「スポンサー事例を探して分析すんのだるいわぁ…」

我々のSPOVA DBはそんな作業をラクにするために社内用に開発したデータベースです。

下の図はシステムのトップページです。上段には国内、下段には海外事例が並べられ、最新スポンサー事例を一覧で見ることができます。

そしてこの2万件以上の国内・海外事例を「企業・業界」「コンテンツホルダー(スポーツチーム・団体など)」視点で分析することができます。

要はこういうことです。企業・業界分析では、業界や企業別にスポンサーしているスポーツチームを見ることができます。企業・業界別にどのスポーツチーム・団体にスポンサーしているか?がわかります。

具体的にはってことで、ちょっと前に企業・業界分析の記事をお出ししましたので、気になる方はポチッと願います。

逆にコンテンツホルダー分析では競技種目とそのスポーツチーム別に獲得しているスポンサーを見ることができます。競技・スポーツチーム・団体別にどんなスポンサーを獲得しているか?で事例を抽出できるってわけです。

加えて、事例の効果(SNS反響、売上・営業利益への影響)を起点に分析できるページもあったりします。

今回の記事では「コンテンツホルダー分析」に絞ってご紹介します。

1-1. コンテンツホルダー分析で何ができる?

繰り返しますが、コンテンツホルダー分析では、競技種目やスポーツチーム別にどんなスポンサーとどんなことをしているか?を見ることができます。コンテンツホルダー分析という文字の下にある「国内」ボタンをポチっとすると以下の画面に遷移します。

ここでは競技種目・スポーツチーム別にスポンサー事例を絞ることができます。例えばJリーグチームで絞る場合はこんなかんじです↓。

例えば2020年シーズンのJ1チャンピオン川崎フロンターレで絞ってみます。するとこんなふうに表示されます。フロンターレがどんなスポンサーとパートナーシップを結んでいるのか、が上段に。下段にはそれに紐づく事例が一覧で並ぶっちゅうわけですね。

スポーツチームよりももう少し大きい単位の競技種目で絞る場合はこんな↓かんじでフィルタリングできます。現時点ではサッカー、バスケのみですが、将来的に野球、ラグビー、卓球などを追加していく予定です。

例えばサッカーで絞るとこんなかんじです↓。事例としてはナイキ、日清オイリオ、帝人なんかの事例が表示されてますね。

1-2. 社会の注目度を表す興味スコア

下段に表示されるスポンサー事例ですが、表示される順番は日付が新しいものから、というわけではありません。表示順を決めるのは下段の右にある興味スコアなるものです。

これは各記事の発信元SNSアカウントが投稿した当該記事に対して、どれだけエンゲージメント(コメント、リツイート、いいね)があったか、で算出しています。各エンゲージメント指標はその重要度に応じ、統計学的に妥当と考えられる調整をしてスコア化しています。

ごちゃこちゃと難しく語りましたが、要は“どんだけSNS上で反響があったか”を測る指標ってわけです。正直なところ、スポンサー事例は山ほどあります。海外までその範囲を広げればその数は膨大なものになります。そしてその多くは世間からまったく注目されない事例だったりします。そういった事例を見るよりも、社会的な注目を集めた事例を上から表示できる。それが興味スコアってわけです。

ここまで説明したことと同じようなことが海外のコンテンツホルダーについてもできます。↓にあるように海外のスポンサー事例を競技種目、スポーツチーム(リーグ、団体)で絞り込むことができるってわけであります。

ざっと見ていただければわかりますが、プレミアリーグ、NBA、MLS、フォーミュラ1なんかが並んでますね。これらの団体ごとにどんな会社とパートナーシップを結んでいるのかがわかるのがSPOVA DB(データベース)ってわけです。

2. 筆者が選ぶゴルフのスポンサー施策3選:面白い&ユニークな先進事例

ここまででSPOVA DB(データベース)のコンテンツホルダー分析について「ほぅ。こんなシステムあるんか」とご感心いただければ本望でございます。

ではではここからが本題である、ゴルフへのスポンサー事例で、ワタシがユニークやでぇと思った企画を3つご紹介します。過去には上記でご説明した「興味スコア」でスポンサー事例をランキングした記事もいくつかご紹介しました。しかし、今回はあえてSNS反響度などの画一的な指標に基づいた事例ではなく、あくまでワタシが「なるほどぉ~」と唸った事例3選でございます。

2-1. PGA of America lands AIG insurance deal[2019年7月17日]

まずご紹介するのは、AIGPGA of America(全米ゴルフ協会)と締結したパートナーシップについてです。

AIGはアメリカに本社を置く保険会社。日本でもビジネスを展開しています。AIG損保、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。このパートナーシップには、PGAツアーやその他主要大会へのスポンサーが含まれます。

この契約がおもしろいのは単なる主要大会へのスポンサーだけではありません。PGAとはProfessional Golfers’ Association of Americaの略で、文字通り米国のクラブプロ・レッスンプロが加盟する団体です。その会員数は29,000人にも及びます。(出典:PGA | The PGA of America

AIGは、退職後の資産運用などについてアドバイスを行う子会社を持っています。この子会社がプロに対して引退後の資産形成などについてのアドバイスを提供する契約がパートナーシップに組み込まれています。長年にわたってAIGの後ろ盾のもとに活動してきた元プロ選手達が、信頼を寄せてAIGのサービスを活用する形はまさに長期的なWin-Winサイクルですね。

(出典:PGA Retirement Plus | HP

2-2. Air New Zealand celebrates sponsorship of PGA Pro-Am Championship with on-board golfing[2012年3月27日]

続いて紹介するのは、Air New ZealandNew Zealand PGA Pro-Am Championshipが行った取り組みです。

2012年に開催されたNew Zealand PGA Pro-Am Championshipには、世界から選手が参加します。そして観客も世界各地から観戦に訪れます。Air New Zealandはこの世界中から来る観客の移動時間に目を付けました。なんと飛行機の中で、ゴルフ大会を開催したのです!この空中ゴルフ大会に参加できるのは、各便につき4名の乗客。大会優勝者には、New Zealand PGA Pro-Am Championshipファイナルのチケット、フライトチケット、ホテル、ゴルフクラブがプレゼントされたそうです。飛行機の通路をグリーンに見立てた空中ゴルフ大会

この企画のうまいところは観客の移動時間に着眼したってとこですね。企画を考えるとき、どうしても大会中とか競技場内で何かできないか?と考えがちです。

でもファンのスポーツ観戦を分類すると観戦・観戦・観戦に分類されます。そしてこの全てが観客にとっての観戦体験なのです。なのでこの観戦という観客のカスタマージャーニーを考えてみるとアイデアが膨らみます。この事例はそのお手本のような事例かと思います。

ちなみにUberはマンチェスター・ユナイテッドファンのカスタマージャーニーに着目しマンUとある企画を実行しています。

この企画によって、彼らはマンUファンの観戦前&後の観戦体験向上に寄与しつつも、自分たちの売上にも直結させています。

2-3. PGA and LPGA partner with Aon to offer US$1m annual prize[2018年7月9日]

最後にご紹介するのは、AonがPGA TourLPGA(全米女子プロゴルフ協会)と共に行った取り組みです。

Aonはイギリスに本社を置く企業です。退職後のサポート、再保険のサポートや、企業経営上のリスクマネジメントに関するコンサルティング業務など幅広いサービスを提供しています。(出典:Aon | About Aon

行った取り組みは「Aon Risk Reward Challenge」なるものです。これはシーズンを通して、ポイントが加算されていき最もポイントが多かった選手に約1億円の賞金が贈られるというものです。注目すべきは何を基準にポイントが入るか、というところですよね。これはAonが分析したデータに基づいて、最良のプレーをするために、戦略的な決定をした、計算されたリスクを負った選手に対して加算されていくようです。つまり、戦略的にリスクを負うプレーをした選手に対して賞金が与えられるってわけです。Risk Reward Challenge、名前の通りですね。リスクマネジメントを提供する企業ならではのユニークな取り組みです。(出典:Aon | Aon Risk Reward Challenge

この事例は自社とゴルフというスポーツの特性を見事にマッチさせた企画ですね。お伝えしたとおり、AONは個人の人生や企業の経営上のリスクについてのコンサルティングサービスを提供しています。いわば“リスクマネジメントのプロ”なわけです。

一方、ゴルフはバンカーやら池ポチャというリスクを予測しながら戦略的にプレーするスポーツです。AONは自社のリスクマネジメントのプロ、という特性を最大限にアピールするために、ゴルフの特性である“リスク予測”をかけ合わせた企画を作ったわけです。このように、自社とそのスポーツorチームの特性の親和性を考えるとより強力なメッセージを発することができます。

かつてMicrosoftは自社の企業ミッションとeスポーツの特性をかけ合わせ、強力なメッセージを発することに成功しています。その事例についてはこちらの記事で書いてありますので、気になる方はご覧ください。

3. おわりに

以上がゴルフのユニークなスポンサー事例3選でございました。

もし「このシステム興味あるなぁ」って方がいましたらご連絡いただければ幸いです。まだまだ開発段階ですが、毎日夜なべしてその精度と使いやすさをアゲアゲしています。

「スポンサー事例集めるのだるいわぁ」

「あの競技で成果が見込めるスポンサー事例を手早く知りたいわ」

「この業界、国内競合、あの海外企業の取組がサクッと知りたいわ」

と思う方には便利なデータベースに仕上がりつつあるので、ぜひぜひお気軽にお問い合わせください。

これからも引き続きスポーツチームと企業のビジネスとしての関係構築に役立つ情報を発信していきます。Twitter・Facebookのフォローもどうぞよろしくお願いいたします!