「スポーツスポンサーにお金使うより、デジマ(デジタルマーケティング)の方が効率よくないですか?」

ある企業担当者が困り顔で私に聞いてきました。

私は答えました。「確かにデジマは熱いですよね。時代にあった強力なマーケティング手段です。ただ、デジマもスポマ(スポーツマーケティング)も様々な施策、種類があります。御社の中でも場面や課題ごとに有効なデジマorスポマ施策を整理しておくのがいいかもしれないですね」

最近よく耳にする「デジタル」、「デジマ」、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」。Googleで「デジタル」なんて検索した日には「いまさら聞けないデジタルほにゃらら」みたいな記事がたくさん出てきます。

企業のご担当者で、スポーツマーケティングに興味はありつつも、デジタルマーケティングも気になるって方はけっこういらっしゃるかと思います。

デジタルマーケティングもスポーツマーケティングも様々なマーケティング施策群の総称です。

そこで今回の記事ではデジタルマーケティングであればリスティング広告、メルマガ。スポーツマーケティングであれば物販販売独占権など、具体的な個別施策を出しながら、2つのマーケティング手法の特徴を比較整理していきます。

執筆担当の私は機械オンチのアナログ人間なので、専門的な言葉はなるべく使わずに書いていきたいと思っている次第であります。

それではまいります!

1. デジタルマーケティングとは?

そもそも「デジタル」とはなにか?

ある辞書によると、「物質・システムなどの状態を数字・文字などの信号によって表現する方式」だそうで、要は「数値、データで表現すること」と言えそうです。

デジタルの反対はアナログですが、例えば、「めっちゃ太った!(アナログ)⇔12Kg太った!(デジタル)」、「遠い!(アナログ)⇔200km!(デジタル)」みたいなかんじです。

なので、デジタルマーケティングとはマーケティングに数値、データを利用するもの、と言えるかと思います。

デジタルマーケティングといってもいろいろあります。ざっと例をまとめてみると以下のように類型化できるでしょうか。

類型 施策例
検索系 ■リスティング広告
  ■ネットワーク広告
  ■ディスプレイ広告
  ■リターゲティング広告
Email系 ■メルマガ
  ■LINE
Webサイト系 ■オウンドメディア
  ■ネイティブ広告(他社メディア媒体掲載記事)
SNS系 ■Facebokバナー
  ■Instagramバナー
  ■Twitterバナー
  ■Youtubeバナー
  ■Instagramインフルエンサーマーケティング
  ■Twitterインフルエンサーマーケティング
  ■Youtubeインフルエンサーマーケティング
横串ソリューション系 ■MA(Marketing Automation)
  ■CRM

企業は昔から顧客の購買データなどを使って営業活動をしていました。にも関わらず、急に最近になって「デジタル…デジタル…」と誰もが念仏のように唱えるようになりました。

この背景にはインターネット、SNS、スマホの爆発的な普及が関係しています。例えばTwitter。アプリを開けば、何人フォロワーがいるのか、何回リツイートされているのか、などをデータで把握できます。しかもこれらはユーザーの地域、過去1ヶ月の推移など、かなり細かい単位で見ることができます。

つまり、インターネット、SNS、スマホによって、「情報をタイムリーに細かく」取得・分析できるようになったのです。それが故にデジタル情報の重要性が叫ばれているわけであります。

このようにWebやアプリを通じて、細かくタイムリーな顧客情報を取得・分析する。そして各種デバイスを通じてターゲティングした人にドンピシャの情報を提供し、購入・加入を促す。これがデジタルマーケティングなのです。

ざっくり言うと、「細かいデータでお客さんを分析、ターゲティングし、デバイスを通じて行動を促す」のがデジタルマーケティングと言えそうです。

デジタルマーケティングの特徴
デジタルマーケティングの特徴

ここだけの秘密ですが、私は2日前にこっそり&がっつり転職サイトを閲覧しました。それからというものの、Yahoo!の右上に大手転職会社の広告が表示されるようになりました。

2. スポーツマーケティングとは?

2つの比較に入る前に、ここで言うスポーツマーケティングの定義について、さらっと触れておきます。

スポーツマーケティングは2種類に分けられます。1つはそのスポーツを広めるためのスポーツ自体のマーケティング。

2つ目は企業などがスポーツを利用して自社製品などを売るためのマーケティング。今回の記事ではデジタルマーケティングと比較するために後者の意味でお話します。

ざっくり例をまとめてみると以下のように類型化できるかと思います。

類型施策例
露出系■看板・ユニフォーム
■命名権・冠名権
協業系■肖像権(動画への選手活用等)
■プロモーション権(試合会場周辺ブース設置等)
■商標権・商品化権(チーム限定パッケージ等)
■独占販売権(チームHPやスタジアムでの独占販売)
■参加権(招待チケット等)
■実証実験(選手を使ったシューズ開発データ収集等)

3. デジタルマーケティングとスポーツマーケティングを具体例で比べてみた

マーケティングとは原則的に言えば「市場(顧客)との対話」です。今回の記事では2つの手法が、「誰との対話なのか」、「(対話の結果)消費者にどんな効果があるのか」という視点でみていきます。

「誰との対話なのか」で比べてみた:コカ・コーラ、LEOCの事例

デジタルマーケティングは、性別、年齢、検索/購買/行動履歴などから対話(情報を発信)したいターゲットをぐぐ~っと絞ります。そしてデバイスを通じて情報を届けます。

例えば検索系のディスプレイ広告であれば検索履歴からターゲットを絞ります。Yahoo!の右上にデカデカと表示されている転職サイトの広告も、「30代 転職 限界」で検索しまくった私の履歴から表示されているわけです。

では、スポーツマーケティングはどうか?例えば露出系の施策に限ってみると、対話できる人の範囲はもう少し広いです。別記事でも紹介しましたが、これは露出系のスポーツマーケティングでは情報が重層的に拡散されるからです。

例えばスタジアム看板やユニフォームロゴ。これらはまず1次伝播としてスタジアムに来た人の目に触れます。次に試合がテレビ、新聞、雑誌で報道され、人々に届けられます。これが2次伝播。そして3次伝播としてSNSで拡散されます。このように露出系のスポーツマーケティング施策は1次、2次、3次と情報が重層的に拡散していくという特徴があるんです。

もちろんテレビCMと比べると限定的ですが、リスティング等のデジタルマーケティング施策との比較で言えば、露出系スポーツマーケティング施策はより広く浅く対話すると整理できます。

スポーツマーケティングの拡散イメージ
スポーツマーケティングの拡散イメージ

っとここまでは“社外への物売り”文脈のマーケティングについてでした。誰との対話なのか、という視点で言えば社内の人との対話もあります。社内体制強化のための“内向き”のマーケティングです。わかりやすく言うと、採用や従業員のエンゲージメント(忠誠心/モチベーション)向上、結束強化を狙ったものです。

デジタルマーケティングの例で言えば、採用サイト。企業にとって優秀な人材確保はMUSTです。そのため、多くの企業が採用に特化したオウンドメディアを運営しています。その会社に興味を持ってくれた人にターゲットを絞り、社員の一日、先輩社員の紹介などを発信して「ほらほら、うちの会社いいっしょ。だから応募して!」とアピールします。これもまた社内体制を強化するデジタルマーケティング施策なのです。

同じような施策はスポーツマーケティングでもみられます。

コカ・コーラ社は1928年からオリンピックをサポートしており、今ではワールドワイドパートナーに名を連ねています。そこで日本コカ・コーラ社はオリンピックを題材とした社員のモチベーションアップを狙った映像を作成しました。これにより「コカ・コーラでオリンピックに関わりたい!」と思う社員が増え、退職者の数が大きく減ったそうです。(出典:日経XTECH |「スポンサーシップとは? コカ・コーラが説く本当の意義」)

また、スポーツチームにスポンサーすることで新卒採用に貢献したというケースもあります。学校・病院給食などの管理・運営を行うLEOCは、キングカズが所属する横浜FCにスポンサーしています。

LEOCは横浜FCにスポンサーしたことによって、首都圏における学生の応募総数が、スポンサーする前と比べて137%に増加したという研究結果もあります。(出典:早稲田大学 |「B2B 企業のスポーツ協賛が「社名認知度」および「就職意向度」に与える影響について」

実際にLEOCのHPには横浜FCの写真が貼り付けられています。米国ではスポーツに関わる仕事は「ドリームジョブ」と言われ、人気の仕事です。これは日本でも同じでアスリート支援をしたい学生さんは数多くいます。LEOCのHPをみた学生さんが「やりたかったスポーツの仕事じゃねぇかよ~!」と熱狂しながらESを提出した姿が目に浮かびます。

(出典:LEOC |「事業内容」

このようにデジタルマーケティングもスポーツマーケティングも社内を強化するためにも活用されるんです。

補足です。社員の忠誠心向上などを狙ったマーケティング活動を一般的にはインナーマーケティングといいます。しかし今回の記事ではこの用語を使っていません。理由としては、新卒採用は社から人を採用することであり、インナーマーケティングの一部とすることは誤りと判断しました。というわけで、「社内体制構築のための内向きのマーケティング」と整理しました。

4. おわりに

いかがでしょうか。デジタルマーケティングとは?スポーツマーケティングとは?誰との対話に活用できる?について、みなさんの理解が少しでも深まってくれていたらこれ幸いです。

後編では、「(対話の結果)消費者にどんな効果があるのか」について具体例とともに深堀りしていきます。

おそらく勘のいいみなさんは、

「対話する対象の違いはわかったわい。ほいじゃ対話の相手はどう感じるのか?どんな心理的効果をもたらすんじゃい!」と思っている気がしてなりません。

というわけで、後編では対話の結果、デジマとスポマは消費者にどんな心理効果をもたらすのか、についてツラツラ書いていきたいと思います。以下から後編をお読みください!!