ちょっと前に、ブロックチェーン技術を使ったNFTやファントークンがスポーツ界で注目を集めてるって記事を出しました。国内外のスポーツチームでどのように使われ、どのような新しい価値を生み出しているのか。そんなことについてお話しました。
今回の記事では、日本国内のファントークンについてフォーカスしたいと思います。日本では、FiNANCiEというファントークン取引所が有名ですが、ここからトークンを発行している国内チームは現在6チームあります。J1の湘南ベルマーレ、B2の仙台89ERS、J3のY.S.C.C、社会人サッカークラブのSHIBUYA CITY FCとCOEDO KAWAGOE FC、プロアイスホッケーチーム・横浜GRITS、です。
そして、ついこの間の5月上旬、この時点で取引開始していた湘南ベルマーレ・仙台89ERS・Y.S.C.C・SHIBUYA CITY FCのファントークンの価格が全て大きく上昇しました。その中でも、トークン価格上昇をけん引&最も大きな上昇幅を見せたチームがあります。それがSHIBUYA CITY FCです。
SHIBUYA CITY FCは、つい最近もJR渋谷ハチ公口付近に巨大広告を打ったことでも話題を呼びました。
今回はそんな何かと話題のSHIBUYA CITY FCにどんな特徴があって、なぜトークン価格の上昇を生み出したのか独自の考察をしていきたいと思います。
目次
1. 渋谷シティFCとは
まず渋谷シティFCがどんなサッカークラブなのか、からお話していきます。
渋谷シティFCは、2014年に東京シティFCとして設立されました。渋谷をホームタウンとし、Jリーグ参入を目指すサッカークラブです。現社長の山内一樹さんが、Facebookでメンバーを集めてできたチームです。(出典:note | サッカークラブのつくりかた #1 「TOKYO CITY F.C. 立ち上げ」編)2020年に渋谷シティFCという名称に変更し、”渋谷“を全面に打ち出しています。また、選手・スタッフともに、渋谷の街を彩る”ミレニアル世代”が中心メンバーというのも渋谷シティFCの特徴です。
1-1. 渋谷シティFCの現在地と歩んできた道のり(競技成績)
ここからは、渋谷シティFCがどのレベルにいて、ここまでどのように成長してきたのか、についてふれていきます。
渋谷シティFCは、東京都リーグ1部というリーグに所属しています。Jリーグでいうと、J7に相当するリーグです。2021年からJリーグ参入(J3)まで最短4年、J1まで最短6年かかる位置ですね。
では、渋谷シティFCが歩んできた道のりについてご紹介します。2015年より東京都社会人サッカーリーグ4部に参入、その年に優勝し3部へ昇格。2018年に都3部から2部へ、2020年に2部から1部への昇格を決めています。2021年の今シーズンは都リーグ1部で戦う初めてのシーズン。これから渋谷シティFCは、Jリーグ参入までどのような歴史を刻んでいくのか楽しみですね。
1-2. どんな選手がいるの?
続いて、渋谷シティFCに所属する選手について見ていきたいと思います。
↓の表は、渋谷シティFCに所属する選手の一覧です。渋谷シティFCは東京都リーグ一部に所属するチームの中で唯一、日本代表に選出された経験のある阿部翔平選手が在籍しています。あの市船で10番を背負い、キャプテンだった選手です。さらに、柴村直弥選手、鈴木崇文選手、上田悠起選手、宮崎泰右選手などの元Jリーガーも数多く在籍しています。このように、他の東京都リーグ一部のチームと比べると多くの元Jリーガーが所属しています。(出典:note | サッカークラブのつくりかた #9 「Football for good サッカーで渋谷から世界を変える 」編)
2. なぜ渋谷シティFCのトークン価格は最も上昇したのか
では、本題のなぜ渋谷シティFCのトークン価格が上昇したのか。ここからはその理由に迫っていきます。
2-1. そもそもトークンの価格はなぜ上がるのか
冒頭で、5月上旬に4チームのトークン価格が大きく上昇した&その中でも渋谷シティFCが先駆けて動き、その上昇をけん引したとお伝えしました。
渋谷シティFCのファントークンが上場したのが4月29日、2.2円で始まったトークンの価値は、4/30には2倍、5/1には4倍と徐々に上がっていきました。そこから5/6には100倍、5/7には200倍、最大値では400倍以上の900円近くまで価格が上昇しました。トークンの発行数が200万個だったので、発行トークンに対する時価総額は最大約18億円まで上昇したことになります。
そもそも、トークンの価格上昇ってなぜ起きるのでしょうか。トークンの価格というのは、需要=トークン購入者数と比例します。つまり、トークン購入者数が増えると価格も上がるというわけです。購入者の数は何を要素として決まるかというと、どれだけ知られているか(認知量)×どのくらい興味をもたれているか(興味レベル)、で決まります。なので、まずは認知をしてもらい、興味をもってもらうことがトークン価値を高めるのです。
渋谷シティFCのトークンは他のどのチームよりも、先に上昇し、最も高い上昇幅を見せましました。それはどのチームよりも早く&大きな需要(≒認知量×興味レベル)を獲得できたということです。
それではここから、渋谷シティFCトークンに「大きな認知量」と「高い興味レベル」をもたらした要因について考察していきたいと思います。
2-2. 認知獲得要因:分散型の情報発信
まず、なぜ渋谷シティFCが大きな認知を獲得できたのか。1つは、渋谷シティFCには、特徴的&高い情報拡散力があったからだと思われます。
まずは、運用しているSNSの数の多さから渋谷シティFCの情報拡散力の強さがうかがえます。渋谷シティFCのSNS展開は、Facebook、Twitter、Instagram、YouTube、TikTokとかなり幅広いです。
特に注目すべきは、Twitter。渋谷シティFCの公式アカウントには、4,934のフォロワーがいます。(2021年6月4日時点)(出典:Twitter | Twitter)公式アカウントのフォロワー数だけを見ると、そこまで多くはありません。しかし、渋谷シティFCの情報拡散力には秘密があったのです。
↓はTwitterの検索画面で”SHIBUYA CITY FC”と検索した結果です。アカウント名の書き方に統一感がありますね。一目で渋谷シティFCに関係する人だ、と印象に残ります。
アカウント名、プロフィール欄から渋谷シティFCだとわかるアカウントは、26アカウントありました。さらに、この26アカウントの合計フォロワー数は約38,000人です。
これが渋谷シティFCの拡散力の秘密です。チームアカウントだけで一元的に運用するのではなく、チームの選手・スタッフの個人アカウントも使って、まるで花火のように分散的に発信しています。
この分散型発信はTwitterだけでなくWebブログツールでも行われています。それが、「note」というWebブログです。noteは文章、写真、イラスト、音楽、映像などのコンテンツを発信できるWebサービスです。ブログとして長文で様々な情報を発信することができます。
渋谷シティFCのスタッフ・選手はnoteで、積極的にチームのビジネス面、競技面など、色んな角度からそれぞれの考えや思いを発信しています。今回取り上げているトークンについても、発売に至るまでの経緯や今後の展望についてもこのnoteに書かれていました。渋谷シティFCはここでも、公式アカウント、スタッフ・選手のアカウントを使って分散的にチームに関する情報を発信しています。
様々なSNSやブログを駆使して、濃淡様々な情報を戦略的分散型発信というわけです。おそるべし、渋谷シティFC。
2-3. 興味レベル獲得要因①:渋谷シティFCが目指す新しいサッカークラブ像
ここからふれていくのは、認知量×興味レベル、の興味の部分。なぜ多くの人がJ7相当の社会人チームである渋谷シティFCに興味をもったのでしょうか。
みなさん、就職、転職の際や投資する会社を探すときに必ずチェックするポイントはなんですか?その会社が何をしている会社で、何を目指しているのか、というのは必ず確認するのではないでしょうか。会社が掲げるビジョンやミッションは、人々がその会社に興味を持つきっかけになります。それは、スポーツチームも同じです。
渋谷シティFCが掲げるビジョンは、「Football for good “ワクワクし続ける渋谷をフットボールで”」です。
渋谷シティFC代表の山内一樹さんによると、
“渋谷は、ファッションや音楽などのカルチャーや、IT、ビジネスなど、分野を問わず次々に新しいものが生まれる街。
渋谷の街を中心に、365日、渋谷に関わる人々や企業・組織とコンテンツを共創する新しい形の都市型フットボールクラブになりたいと思っています。”
(出典:CAMPFIRE | 渋谷から世界で最もワクワクするフットボールクラブを共に創るクラウドファンディング)
という具合にビジョンに関する考えを述べておられます。ワクワクした街をサッカーを通じて実現する、という今までのスポーツクラブにはない新しいビジョンを掲げるサッカークラブです。
また、渋谷シティFCはサッカークラブの”強さ”の定義を変えようとしています。
みなさんの想像する”強い”サッカークラブとはどのようなクラブでしょうか?大会での成績がいい、優秀な選手をたくさんかかえている、大きなスタジアムを持っている、などでしょうか。これらは、競技力と収益力という視点から判断した”強い”サッカークラブです。
HPによると渋谷シティFCは、新しい”強さ”の定義について
“「競技力」「収益力」に、新たなクラブの評価軸として「社会的インパクト」を加え、
「社会的インパクト」の最大化を追求する新たな価値観によるクラブ経営を実現していきます。”
(出典:SHIBUYA CITY FC | 渋谷百年構造プロジェクト)
と言っています。
“渋谷をワクワクさせる”というビジョン、そしてサッカークラブとしての新しい強さを追求する。そんな渋谷シティFCがつくる”新しいサッカークラブ像”というのが、人、企業の興味関心を引き付けているのではないでしょうか。
2-4. 興味獲得要因②:IT企業+大企業を巻き込む力
渋谷シティFCは、現在J7に相当する社会人サッカークラブですが、すでに多くのパートナー(スポンサー)企業がいます。
↓は渋谷シティFCのパートナー企業の一部です。
オフィシャルトップナートナー、オフィシャルパートナー企業の多くが渋谷に本社を置くベンチャー企業・スタートアップ企業です。トークンに興味関心度が高そうな方々が多く在籍してらっしゃいそうなパートナー達です。
それと、誰もが名前を聞いたことのある有名企業が2社ほど入ってますね。東急株式会社と株式会社伊藤園です。東急株式会社は1922年、株式会社伊藤園は1966年に設立され、ともに渋谷に本社を置く東証一部上場企業です。そんな渋谷の大御所企業も、渋谷シティFCのパートナー企業として名を連ねているのです。(出典:東急 | 会社概要、伊藤園 | 会社概要)現在渋谷シティFCが所属する東京都リーグ1部のチームにおいて、一部上場企業がスポンサーになるのはかなり珍しいケースです。
渋谷シティFCには、渋谷に本社を置くベンチャー企業を集めるだけでなく、長らく渋谷を支えてきた大御所企業をも巻き込む力があることが分かります。
2-5. 興味レベル獲得要因③:渋谷シティFCならではの特徴的な取り組み
渋谷に本拠地を置く渋谷シティFCならでは、の企業との取り組みをご紹介します。
まず1つ目は累計30社以上の企業が参加するベンチャー企業対抗のフットサル大会です。スポンサー企業のマーケティング活動を支援するほか、参加企業の社内外コミュニケーションを目的に実施したそうです。渋谷にはIT系ベンチャーが多いので、渋谷シティFCならではのイベントですね。
試合前には両チームの代表同士が、名刺を交換するなど、企業同士の交流の機会が設けられました。フットサルコートの真ん中で名刺交換!明日以降の打ち合わせ日程が忙しくなりそうなアイデアですね。数字でどれくらいの企業同士のつながりが生まれたかは分かりませんでしたが、ここから渋谷のベンチャー連合軍が世界に羽ばたいていったら熱い展開ですよね。
2つ目はナイキジャパンとコラボした、LIGHT PALETTE FUTSAL。渋谷の人気クラブWOMBにて、DJミュージックをガンガン流した空間でサッカーをするという超イケイケなイベントです。光るボールを蹴るとボールの軌跡が光で描かれるという、プロジェクションマッピングの技術を応用した新しい&渋谷らしい企画!
下の動画は、イベントの様子です。超イケイケ空間でのフットサルで、”渋谷”感満載のイベントですね。若者の関心を大きく惹きつけた結果が想像できます。
2つの施策ともに、“ワクワク”するような、渋谷シティFCならではの取り組みです。これらも渋谷シティFCへの興味を喚起した要因だと考えられます。
2-6. まとめ:なぜ渋谷シティFCのトークン価格は先駆けて、最も上昇したのか
まとめると、渋谷シティFCのファントークンの価格上昇の要因は、SNSやWebブログを駆使し、認知を拡大する分散型の情報拡散力があったこと。そして、①渋谷シティFCが目指す新しいサッカークラブ像、②IT企業+大企業をまき込む力、③渋谷シティFCならではの特徴的な取り組みという、人々の興味を引くポイントがあったからだと思われます。
それらの要素が相乗的に掛け合わされ、ファントークン価格の先駆け&最大の価格上昇につながったのではないかという考察でした。
3. おわりに
いかがでしたでしょうか。
最近話題の渋谷シティFCというサッカークラブの特徴、そしてその特徴からトークン価格の上昇の要因を独自の視点で分析してみた。というお話でした。
今後、渋谷シティFCのようにファントークンを発行するスポーツチーム数が増えて行けば、トークン全体の認知・興味が上がっていきます。そして、個別のトークンが上昇したという事例が増えれば、日本のトークン市場並びにスポーツ界がより一層盛り上がっていくのではないでしょうか。
渋谷シティFCの小泉さんはトークン価格が上昇した際、「今回の盛り上がりで一番感じたことは、サッカー業界・スポーツ業界が本当に大きく変わる可能性を秘めているということです。」とおっしゃっています。(出典:note | フィナンシェのSHIBUYA CITY トークン販売でこの14日間に起きた出来事)
我々も、スポーツ市場がファン、チーム、スポンサー企業にとってより魅力的で&成長する産業へと発展していくことを全力で支援するために活動しています。今回はそんな思いを込めて記事を執筆させていただきました。今後もNFT・ファントークンの経済発展に寄与する情報を発信していきたいと思いますので何卒よろしくお願い致します。