皆さま、コーシャってご存知ですか?
実はこちらある宗教に関する用語です。そして、最近結構注目度が上昇中のキーワードだったりします。
今回はそのコーシャがどのような規定なのか、背景となる宗教はどのような特徴があるのか、そしてなぜいまコーシャへの注目度が高まっているのかについて説明していきたいと思います。
1. コーシャって?
はじめに、ユダヤ教では食べてよい食物と、食べてはいけない食物に関する食事規定が定められています。そして、その食事規定のことをコーシャと呼びます。
その中では、動植物をはじめとして、添加物、設備、道具、製造過程、パッケージにいたるまで、様々なルールが定められています。(出典:コーシャジャパン | コーシャとは?)
全部紹介することは無理そうなくらい規定が多く複雑なので、ここでは代表的なコーシャの規定に絞って紹介をしていきます。
まず代表的なものとして、食肉に関する規定です。
コーシャではひづめが割れている、反芻する(一度飲み込んだ食物を胃から口の中に戻し、再び噛んでからまた飲み込むこと)動物の肉が食べてOKとなっています。つまり、牛、羊、鹿などの肉はOKということですね。
一方で、豚、イノシシ、馬などの肉はNGです。豚キムチとか馬刺しとか食べられないんですね…(出典:weblio辞書 | 反芻、コーシャジャパン | コーシャとは?)
鳥類に関しては、鷲(わし)、鷹(たか)、梟(ふくろう)などの猛禽類や、カラスなどの特定24種とされている鳥はNGです。(出典:コーシャジャパン | コーシャとは?)
コーシャの規定は食べても良い肉の種類の他に、製造過程についてもルールがあります。動物を苦しまずに屠殺すること、動物の肺が清浄であること、全ての血とほとんどの脂肪を除去することなど、様々なことが求められます。(出典:コーシャジャパン | コーシャとは?)
もちろん規定は食肉に関するものだけではありません。
魚介類については、甲殻類や貝類がNGです。
その他にも、野菜、果実、調味料、酒類、サプリメントなどについて同様に細かく禁止事項が定められています。
さらにさらに、同じ料理に肉と乳製品を一緒に使わないなど、食べ合わせに関する規定なんかもあったりします。(出典:コーシャジャパン | コーシャとは?)
2. ユダヤ教について
コーシャはユダヤ教の食事規定ですが、そもそもユダヤ教がどのような宗教かあまり詳しく知らない方も多いではないでしょうか?なので、ユダヤ教について簡単にご紹介させていただきます。
ユダヤ教の信者は世界に約1,500万人いるといわれています。正確な数字ではありませんが、日本にも約3,000~4,000人の信者がいるんだそうです。(出典:The Jewish Agency for Israel | Jewish Population Rises to 15.3 Million Worldwide, with Over 7 Million Residing in Israel、在日米国大使館と領事館 | 信仰の自由に関する国際報告書(2020年版)-日本に関する部分)
ユダヤ人(ユダヤ教信者)の特徴としては、コーシャを含む様々な戒律に対する厳格さにより、正統派、保守派、改革派、世俗派の4つに大別でき、多様性があるところが挙げられます。(出典:Mitsubishi UFJ Research and Consulting | II. コーシャ)
世俗派→改革派→保守派→正統派、の順に戒律に対して厳格になっていきます。
まず世俗派の人たちは戒律を気にしないそうで、豚や甲殻類も口にします。さらに、ユダヤ教の暦のなかで一番大切な日である安息日(家事を含む一切の労働をしてはいけない日)も気にしないそうです。(出典:Mitsubishi UFJ Research and Consulting | II. コーシャ、公益社団法人日本看護科学学会 | ユダヤ教 – 異文化看護データベース)
反対に、正統派の人たちは戒律に対して最も厳格です。黒い服を身に着け、髭をたくわえているという外見上の特徴もあるそうです。正統派の人たちは、もちろんコーシャに対しても厳格で、ユダヤ教への対応が期待できない国に行く際はコーシャ食品を携帯して行くそうです。(出典:Mitsubishi UFJ Research and Consulting | II. コーシャ)
ちなみに、正統派よりもさらに厳格な人たちは超正統派と呼ばれています。一生を宗教の学びに捧げるのが厳格な超正統派の生き方とされており、男性の多くは就職をせずに宗教を学び続けるのだそう。超正統派は貧困率が4割を超え、国の補助を受けて暮らす人が多いのだそうです。この超正統派の人口は増加を続けており、ユダヤ教信者が国の7割以上を占めるイスラエルでは国の負担が増すと懸念されています。
超正統派については掘り下げるとキリがないのですが、主な特徴として以下が挙げられます。(出典:独立行政法人日本貿易振興機構 | イスラエル、GLOBE+ | ハイテクの国イスラエルで、戒律と伝統に生きる 「超正統派」とはどんな人たちなのか)
・男女が徹底的に相互隔離される。幼稚園から男女に分かれ、祈りの場所も別々になっている。男女が一緒に歩いていたら、ほぼ既婚者だと思っていいくらい。
・恋愛結婚をしない。20歳前後になると、マッチメーカーと呼ばれる仲介人にお金を払い、家柄や宗教学校での成績などを考慮して、お見合いがセッティングされる
・男性は就職せずに生涯にわたって宗教を学び続けるため、英語も算数も学んだことがない人が珍しくない
・社会に出て、収入を得て家計を支えるのは女性の役割
・世俗の世界からの危険な情報を遮断して生きることが正しいとされているため、テレビもインターネットも禁止
3. 高まるコーシャ食品人気
少し話が脱線してしまったので、コーシャの話に戻ります。
実は、近年世界でコーシャ食品の人気が高まっています。調査会社IMARCによると、世界のコーシャ食品市場は2021年に 199億(約26.9兆円)ドルに到達し、今後も成長が継続する見込みなのだそうです。(出典:三井物産戦略研究所 | ユダヤ教コーシャ認証市場の可能性―⽇本製品拡販のシナジーに期待―)
その理由としては近年、コーシャ食品はイスラム教徒やベジタリアン、食品アレルギーを持つ人、食の安全性を重視する人などが増えているためです。そのことから、非ユダヤ教徒にもコーシャ食が浸透してきています。
1.コーシャとは でご紹介した通り、コーシャと認定される食品は非常に厳しいチェックをクリアした食品のみになります。コーシャ食品に対して認証を与える権限を有しているのは、ユダヤ教の宗教指導者「ラビ」(日本の神社の神主や、お寺の住職のような役職)のみです。(出典:Mitsubishi UFJ Research and Consulting | II. コーシャ)
そのような文脈の中で、「厳格なユダヤ教徒が食べるコーシャ製品は安全である」「ラビが確認をしているから、体に悪いものが入っているとは思えない(=だから健康に良いだろう)」のような認識もでき上がり、健康に対する意識の高い人々がコーシャ食品を買っているとも言われています。(出典:Diamond Online | 日本酒メーカーが「ユダヤ教の食品認証」を相次ぎ取得する理由、獺祭に南部美人も)
ベジタリアンの中には動物愛護の観点から、卵や乳製品を含む、動物性食品をいっさい口にしない「完全菜食主義者(=ヴィーガン)」の人もいますよね。動物を苦しまずに屠殺することが求められているコーシャ食品は、そういったヴィーガンの人達の価値観とも親和性がありそうです。(出典:コーシャジャパン | コーシャとは?、Vegewel | 今さら聞けない「ヴィーガン」と「ベジタリアン」の違い!)
4. ヒンドゥー教にも驚きのタブーが!?
いかがでしたでしょうか。今回はユダヤ教信者の食事規定・コーシャの用語解説をさせていただきました。
このように、宗教や土地柄が違えば、日常生活における”当たり前”というのは大きく違うものです。
例えばインドのヒンドゥー教においては、実は女性の生理が不浄なものとされる風潮があります。生理中の女性が忌み嫌われる傾向があり、生理について話すことさえもタブー視されています。それが故にインドでは生理についての教育も浸透していないのです。なんと、インドでは71%の女の子が初経になってから初めて生理というものがあることを知るそうです。(出典:BBC | Why India must battle the shame of period stain )
そんなインドでの生理に対する”当たり前”を変えていこうと、インドのプロクリケットチームと 生理用品企業がタッグを組んで画期的なマーケティングを行った事例があります。
スポーツの力を使って”当たり前”を変えようとしたかなり面白い事例ですので、ぜひ読んでみてください。