先日、SPOVA(スポバ)はレッドブルのスポーツスポンサーシップを活用したマーケティングの歴史や特徴をご紹介する記事を出させて頂きました。

同じ清涼飲料水の会社で、スポーツマーケティング界の雄といえばコカ・コーラ。様々なスポーツイベントに顔を出しているのはご存じの通りです。FIFAワールドカップ、NBA、プレミアリーグなどここではあげきれないほどに、幅広いスポーツと関係があります。そしてなんといってもオリンピック。コカ・コーラは長年オリンピックのスポンサーを務めています。

今回の記事では、コカ・コーラがオリンピックスポンサーとしてどのようなマーケティングをしてきたのか、じっくり見ていきます。コカ・コーラがオリンピックにスポンサーして成功してることぐらい知っとるわ!と思ったそこのアナタ。
コカ・コーラのマーケティングの歴史を、オリンピックスポンサーとしての活動を通して新ためて考察していくと、また新しい発見があります。みなさんの「へぇ~。コカ・コーラってそういう思想でオリンピックスポンサーしてたのね」をどこよりも多く引き出していきますので、ぜひお付き合いください!

なお今回の記事は、小学生のころコーヒーをコーラだと思ってがぶ飲みして盛大にむせた経験を持つマルタがお送りします。

1. コカ・コーラとオリンピック:その歴史は約100年

ご存知の通り、コカ・コーラはワールドワイドに事業展開&世界各国のスポーツにスポンサーしています。日本だとJリーグチームにスポンサーしていたこともありました。コカ・コーラのスポーツスポンサーの歴史を全て書こうと思うと気を失いそうになるので、冒頭でもお伝えしたとおり今回はオリンピックスポンサーの歴史に絞ってご紹介していきます。

オリンピックが公式にスポンサーの企業名をあげる際、実はアルファベット順の原則から外れ、唯一先頭にくるのがコカ・コーラです。とにかく強い存在感を放っています。オリンピックスポンサーのトップに君臨し続ける。それがコカ・コーラなのです。

(出典:TOKYO2020 | パートナー)

コカ・コーラのオリンピックスポンサーの歴史はなんと100年近くにもなります。最初にスポンサーした大会は1928年アムステルダム五輪。1928年って言ったら、昭和初期にあたります。日本では満州事変をきかっけに日中戦争に突入するでぇ!と国がざわついていた時代です。そんな時代からコカ・コーラはオリンピックにスポンサーしていたわけです。

そんなコカ・コーラのオリンピックスポンサーの歴史を振り返ると大きく4つの“期”に分けられます。それを表したのが↓の図です。アムステルダム大会(1928)~ロサンゼルス大会(1984)までが、マスに訴えかける期、です。ロサンゼルス大会(1984)~シドニー大会(2000)までは、客をターゲティングする期。シドニー大会(2000)~ロンドン大会(2012)は、便利・安いだけじゃない価値を訴求する期。ロンドン大会(2012)~現在は横のつながりを重視する期、と言うことができます。

(出典:フィリップ・コトラー | Marketing 4.0: Moving from Traditional to Digital より作成)

2. マーケティングの父・コトラー先生のマーケティング1.0~4.0

で、実はこの4つの期。マーケティングの父 フィリップ・コトラー先生のマーケティング1.0~4.0を参考にしています。コトラー先生は、マーケティング手法は時代によって変化してきているのだ、と仰っています。それを分類して1.0、2.0、3.0、4.0、と分けたわけです。

コトラー先生の言うマーケティング1.0~4.0とコカ・コーラのオリンピックスポンサーの時代に多少のズレはありますが、コカ・コーラのマーケティングの考え方や変遷とコトラー先生の理論には多くの共通点があります。今回はこのマーケティング1.0~4.0を織り交ぜながら、コカ・コーラのオリンピックスポンサーの歴史を解説していきます。

3. マスに訴えかける期(1928~1980年):多くの人にコカ・コーラを知ってもらいたい!

ではでは一番はじめのマスに訴えかける期(1928~1980年)からご説明します。

コカ・コーラ1886年に販売開始されたのですが、始めの頃はまったく売れなかったそうです。今では考えられませんが、1日平均の販売量はわずか9杯(出典:日本コカ・コーラ(株)| 「コカ・コーラ」の歴史 第1回(1886年~1892年) すべては一人の薬剤師から始まった) そこでコカ・コーラはコーラというものをなるべく多くの人に知ってもらおうとしました。

3-1. マスに訴えかける期のコカ・コーラのオリンピック施策

そこでコカ・コーラは、とにかく多くの人(マス)にコカ・コーラを知ってもらうために、オリンピックを利用します。

彼らは1928年アムステルダム大会にて五輪史上初のスポンサーとなりました。コカ・コーラとオリンピックの長い歴史の始まりです。コカ・コーラはアメリカから1,000ケース以上のコーラ瓶をオランダに送りました。そして会場周辺に売店を設置し、来場者に売りまくります。狙いは当然、オリンピック来場者に“とにかく知ってもらうこと”。この売店効果もあってか、コカ・コーラは1930年にオランダ国内で販売が開始されています。

(出典:日本コカ・コーラ(株)| 1枚のモノクロ写真から蘇る、コカ・コーラ社とオリンピックの歴史。「1928年の『コカ・コーラ』売店」復刻プロジェクト)

1952年オスロ五輪では、コカ・コーラ ボトラー社が協力し、ヘリコプターを初めてオスロ市民の前に登場させました。オスロ市民は初めてヘリコプターを見る。その機体にはコカ・コーラの文字が。この時のオスロ市民にしてみたら宇宙人がコカ・コーラを宣伝しているような衝撃だったことでしょう。“知ってもらう”どころじゃありません。一生コカ・コーラのことを忘れない、くらいのインパクトだったのではないかと思います。

(出典:日本コカ・コーラ株式会社 | コカ・コーラ社とオリンピックのパートナーシップの歩み1

1964年東京オリンピックの際も、彼らは“マスに知ってもらう”ことを意識したマーケティング施策を実行しています。当時の日本は第2次世界大戦の敗戦から立ち直り、かつてないほどの経済成長を遂げつつありました。需要に対して供給が間に合っておらず消費者のニーズに当たればモノが売れた時代です。日本でコカ・コーラの製造が始まったのは1957年、初めてテレビCMが打たれたのは1962年で、オリンピック時点ではその知名度はまだまだこれから、といった段階でした。(出典:日本コカ・コーラ株式会社 | 日本コカ・コーラの歴史)

そんな日本においてコカ・コーラは、大会前から「オリンピックキャンペーン」と冠したPR施策サンプリングを全国で展開します。他にも観光情報をまとめたガイドマップや日英会話集を制作したり、競技場への経路を表示した街頭標識も設置しました。とにかく日本中が注目するオリンピックのあらゆるシーンで“Coca Cola”を露出させまくったのです。それによって多くの国民(マス)にコカ・コーラを知ってもらえるようにしました。

(出典:朝日新聞 | (東京五輪物語)企業も動いた:2 コカ・コーラ 選手ゴクゴク、日本に浸透)

3-2. マーケティング1.0:製品中心のマーケティング

っとここまでマスに訴えかける期、のコカ・コーラのオリンピック施策をご紹介しました。そしてこの時代はコトラー先生の言うマーケティング1.0手法が当てはまります。この手法は“製品中心の”マーケティング、なんて呼ばれ方をします。

この手法が採用されていた時代は、需要に対して供給が圧倒的に不足していた時代です。なので、ある程度消費者の需要を満たすものであればバンバン売れた時代です。とにかく製品を作り、製品を広める。だから製品中心のマーケティングって言われるんですね。

4. 顧客をターゲティングする期(1984~2000年):ターゲットを絞ってコカ・コーラを売りたい!

1928年から約60年、コカ・コーラはオリンピックでとにかく多くの人に知ってもらうマーケティング手法を採ってきました。

しかし、時は流れ、1980年代に入ってくると、技術は発展し製品が安く作れるようになりました。そしてあらゆる企業が同じように製品を作れるため、市場の競争が激しくなりました。同じような製品が同じような価格で売られ、物余りの時代になったわけです。人々には「人と同じ物を買うのは嫌だ」「もっと自分に合ったものを買いたい」という心理も芽生え、「作れば売れる」というイージーな時代は終わりをむかえました。

4-1. 顧客をターゲティングする期のコカ・コーラのオリンピック施策

そんな中、コカ・コーラもオリンピックにおける施策を変えていきます。1984年のロサンゼルス五輪を境にコカ・コーラは訴求したい顧客層を絞り込んだマーケティング手法を展開していきます。イメージは湧きやすいかと思いますが、コカ・コーラのメインターゲットは“若者”です。おじいちゃんやおばあちゃんではなく、10-20代が狙いたいターゲット顧客なわけです。(出典:日本コカ・コーラ株式会社 | 1980-1989 日本初のPETボトル入り「コカ・コーラ」発売)

そこで若者に向けた施策を展開します。

1984年ロサンゼルス大会。コカ・コーラは育成年代を対象とした大会やアカデミーを開催しました。4年後の1988年ソウル大会では学生を対象に、開会式にて使用するピンバッチのデザインコンテストを開催し、1,170万人が参加しました。同年の1988年カルガリー五輪(冬季)の際は、23の国々からの43人の若者たちによってコーラス隊「コカ・コーラ ワールドコーラス」が編成されました。コカ・コーラはオーディションを開催し、このコーラス隊を選抜しました。このコーラス隊はカルガリー大会の開会式・閉会式で大会のテーマソング「Can’t You Feel It?」を披露しました。(出典:The Coca Cola Company | Coca-Cola® And The Olympic Games)

(出典:Youtube | Can’t You Feel It? @ Calgary 1988 Winter Olympics Opening Ceremony)

ご存知の通り、オリンピックは世界的ビッグイベントであり、多くの注目を集めます。とても希少で特別な舞台です。「アナタがデザインしたピンバッチが開会式で使われるかも!?」、「コーラス隊に選ばれたら開会式・閉会式で歌を歌えるよ」。コカ・コーラはこんなメッセージを発することによって、世界中の若者へ”For 夢を追う若者”のイメージを強く発信したってわけです。

上の写真はカルガリー大会開会式でコカ・コーラ ワールドコーラスがパフォーマンスしているときの様子です。オリンピックでは企業ロゴ掲載は禁止されているので「コカ・コーラ」の文字はありませんが、衣装は赤と白のコカ・コーラカラーです。

4-2. マーケティング2.0:顧客中心のマーケティング

コカ・コーラが若者に絞ってターゲティングしたように、企業は顧客を絞って、その人が本当に欲するものを売っていく必要が出てきたわけです。自分たちの製品を買ってくれる顧客の求めるものは何か?これを徹底的に考える必要が出てきたので、マーケティング2.0は「顧客中心のマーケティング」と言われます。

そして、どの顧客セグメントが自分たちの製品をほしがるのか。そんなことを考えるために誕生したのがSTP分析です。消費者を性別とか年齢とかで分類するセグメンテーション(S)。セグメンテーションした上でどの顧客を狙うのか、というターゲティング(T)。市場の中でどの立ち位置から顧客をターゲティングするのか、というポジショニング(P)。STP分析はマーケティング2.0時代に産声をあげたんですね。

このへんの基本的な考え方についてはこちらで解説していますのでぜひチェキしてみてください。

5. 便利・安いだけじゃない価値を訴求する期(2000~2012年):+αの価値を知ってもらおう!

時代は2000年代、21世紀に突入します。この時代になると製品・サービスの機能的価値(より便利であること)、経済的価値(より安いこと)はある程度、満たされた状態になりました。そこで人々は製品・サービスに加えて、+αの価値を求めるようになりました。

またこの時期は、インターネットが急速に普及しはじめた時代でもあります。日本ではiモードなんかが登場し、注目を集めていました。インターネットが広まった結果、消費者はPCや携帯電話から膨大な量の情報にアクセスできるようになりました。それによって人々は多くのことを知れるようになったのです。

人々がアクセスできるようになった情報の1つには企業活動の負の側面としてもある、環境や社会問題も含まれます。そして、消費者は製品・サービスの機能や経済価値に加えて、この環境・社会への影響も含めた+αの価値も購入の判断ポイントにするようになりました。「A社とB社は機能も価格もほぼ同じ。でもA社は前に違法労働問題で騒がれてたから、B社の製品買おっと」みたいに。

企業は消費者や投資家のこういった視線を無視することができず、環境・社会問題への意識をアピールするようになりました。

多くの企業がCSR(Corporate Social Responsibility)レポートとか社会・環境報告書を発行し、自社の環境&社会意識を発信し始めました(下の写真は富士通の2006年の社会・環境報告書の表紙です)。

(出典:富士通 | 富士通グループ 社会環境報告書2006)

5-1. 社会・環境価値を訴求する期のコカ・コーラのオリンピック施策

コカ・コーラも同じように社会問題や、環境問題の解決に貢献してまっせ!を発信するアクティベーションをオリンピックで展開します。

2000年シドニー五輪では子供を対象とした“Coca-Cola Olympic Club: Sydney”と“Powerade-Aquarius Training Camp”という2つのイベントを開催します。オリンピックで使用される最新技術の体験や、オリンピックの競技場を周るツアー。さらにオリンピックアスリートと直接会うこともできたそうです。イベントを通して、オリンピックアスリートになるとはどうゆうことかというのを体験してもらい、青少年育成に貢献するという価値を訴求しました。社会性高し。(出典:The Coca Cola Company | Coca-Cola® And The Olympic Games)

2016年リオ五輪では、貧困街の18~25歳の若者を対象とした職業トレーニングプログラムを実施します。将来ホスピタリティーや会場運営などの職業で役に立つようにオリンピック期間中に若者を雇用し、トレーニングを提供しました。ブラジルの雇用問題という社会問題解決に貢献するアクティベーションってわけです。 (出典:Coca Cola Brazil | ‘COLETIVO EVENTOS’ PREPARES OVER A THOUSAND YOUNG PEOPLE TO WORK AT THE RIO 2016 OLYMPIC GAMES)

(出典:Coca Cola Brazil | ‘COLETIVO EVENTOS’ PREPARES OVER A THOUSAND YOUNG PEOPLE TO WORK AT THE RIO 2016 OLYMPIC GAMES)

環境保護系のアクティベーションも実施しました。2004年アテネ五輪の際には”Olive Tree“5000の木をアテネ市内に植えました。2008年北京五輪では、ペットボトルのリサイクル素材を使用したTシャツを、オリンピックアスリートはもちろん、コーチやチーム関係者に配布しました。

(出典:ACCESS | Coca-Cola Debuts Sustainable Fashion For Olympics

5-2. コトラーマーケティング3.0:価値中心のマーケティング

マーケティング1.0→2.0はお客さんをマスからセグメントした顧客に絞る、という進化が見られました。ではマーケティング2.0→3.0の進化とはどういった点でしょうか。それは訴求内容の進化です。

お伝えしたように人々は大量の情報にアクセスできるようになりました。その結果、企業&商品の背後にある価値、に注目するようになりました。だからマーケティング3.0時代は「価値中心のマーケティング」って言われるのです。例えば「環境に優しい企業or製品かどうか」なんてその最たる例です。どれほど価格が安く使いやすくても、環境破壊をしている企業のものであれば買わないよ、という消費者や投資家が増えてきたのです。そういう人に向けて社会とか環境価値を織り交ぜながら自社&製品をアピールするのがマーケティング3.0ってわけです。

6. 横のつながりを重視する期(2012年~現在):お客さんの間で話題にしてほしい!

そしていよいよ時代は2010年代~今でしょに入っていきます。この時代の特徴は一言で言えば“デジタル”です。インターネットの通信速度は上がりました。そして何より人々は手のひらの中であらゆることが完結する魔法の板を手に入れました。いわゆる、スマホです。

そしてスマホの爆発的な普及とともに、拡大したサービスがあります。SNSってやつです。SNSはご存知、Social Networking Serviceの略です。代表的なのは誰もが元カレ元カノを検索しちゃうFacebook。世の中のトレンドを知れるツイッター。有名人、インフルエンサーの日常を写真でチェックできるInstagramなどなど。

SNSは文字通りSocial(社会)をNetworking(つなぐ)するサービスです。これによって人々はどこにいても、知らない人でも交流することが可能になったのです。結果、消費者はSNS上にある口コミを購買行動における重要な判断材料にするようになっていったのです。

6-1. 横のつながりを重視する期のコカ・コーラのオリンピック施策

コカ・コーラもSNSにおいて、コカ・コーラが話題になったり、口コミされたりするアクティベーションをオリンピックで展開し始めます。

2012年ロンドン五輪では、”Recycle to Beat”というアクティベーションを行います。これはコカ・コーラが長年スポンサーしている聖火リレーと連動したもので、聖火リレーの前座としてコカコーラボトルリサイクル車を走らせました。このリサイクル車の車体の横面には穴が開いており、その穴にボトルを入れリサイクルします。リサイクルした人が車の前で撮った写真は、the Coke Zone というコカ・コーラの特別サイトでダウンロードすることができます。人々はそれをTwitterやFacebookでシェアしました。

(出典:YouTube | Coca Cola Recycle to the Beat 2012

2016年リオ五輪では、リオデジャネイロの街に”Parada Coca-Cola”という入場無料のイベント施設を特設しました。10代の若者たちが写真を撮ってSNSで投稿したくなるような、写真スポットや、ダンスコンテスト、インフルエンサーとの交流の場などを作りました。さらに施設内のステージで行われた音楽イベントはTV放送され、全てを”映え~“に演出したのです。(出典:Coca-Cola Australia | Explore Coca-Cola Station Coke’s Games-Time Hotspot in Downtown Rio) このイベントは、ブラジルの10代の77%にあたる2,100万人にリーチできたそうです。(出典:campaign | How Coca-Cola targeted teens during the 2016 Olympic Games)

(出典:BIZBASH |19 Olympics Sponsor Activations and Experiences That Stood Out in Rio )

2018年平昌五輪では、韓国の若者に人気のエリア、弘大(ホンデ) に巨大なコカ・コーラ自動販売機を設置しました。巨大自動販売機の中では、様々なアトラクションや写真スポットが用意され、#cokeplayのハッシュタグと共に拡散されました。

(出典:The Korea Bizwire | Giant Coca-Cola Landmarks a Hit

さらに、オリンピック公園とオリンピックプラザそれぞれに映える写真スポットも設置しました。

(出典:Olympic | COCA-COLA AND THE OLYMPIC GAMES CELEBRATE 90 YEARS OF PARTNERSHIP

6-2. マーケティング4.0:顧客起点のマーケティング

コトラー先生はマーケティング4.0を以下のように定義しています。

“Marketing 4.0 is a marketing approach that combines online and offline interaction between companies and customers.”

マーケティング4.0っちゅうのは企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティング・アプローチのことやで

スマホ&デジタル時代では人々の接続性が格段に上がりました。地理的・時間的な制約はほぼなく、人々はいつでも・どこでも、グローバルにつながり、コミュニティを作れます。だから横(他の消費者)の情報を重視するのです。だから色々と呼び方はあるものの、顧客起点のマーケティング、なんていい方もできます。

そして企業もこの消費者同士の横の関係に入り込むような存在であることが求められるようになりました。例えばSNSで企業のことを話題にしてもらうとかですね。そのために、企業はますます誠実であり、予期せぬ驚きを顧客に提供する必要がでてきました。要は誠実で“映える感動”の提供が求められるようになったんです。今までは企業から顧客へ、という一方向のコミュニケーションだったのが、まるで“友達”のような存在として扱われる必要がでてきた。これがマーケティング4.0の特徴でもあります。

ただ、いくらデジタル時代だからといってオンラインだけを重視すればいいというわけではありません。オンライン時代だからこそ、オフラインでのコミュニケーションが他社との差別化になるのです。企業はオンラインとオフラインを別々ではなく、統合しながら顧客とコミュニケーションをとっていけYo!とコトラー先生は仰っているのです。

なお、マーケティング3.0→4.0で、大きく変わったと言われるものがあります。それが消費者の購買プロセス(カスタマージャーニー)です。

人はまず、商品を知り、認知(Aware)します。次に商品に関心を抱くという態度(Attitude)を示します。次に、商品を購入するという行動(Act)を起こします。そして最後にリピート購入などの再行動(Act again)を起こさせる。つまり再び自社の製品を買ってもらうためのマーケティングがマーケティング3.0まででは求められていました。この流れは購買プロセスの4Aって言われています。

しかし、人々の関係性は縦から横へ移っているわけです。企業や専門家が言うことよりも、横の仲間の発言を重要視して、何かを買ったりする時代になっているのです。そして評判が良ければ買い、その後SNSなどで拡散します。「これめちゃいいで!オヌヌメ」って。なので人々の購買プロセスの最後には推奨(Advocate)が加えられました。つまり、上でも言ったように企業は誠実で“映える感動”を作り上げ、人々に推奨してもらえるような活動が求められるっちゅうわけです。ちなみにこの購買プロセスは5Aってよばれています。

7. おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はコカ・コーラのオリンピックスポンサーの歴史について考察してきました。

コカ・コーラがスポーツスポンサーの雄であることは疑いようのない事実です。そしてそこに至るまでの過程で、不変のマーケティング法則があった訳ではありません。時代の変遷とともに変わる消費者心理や技術環境に合わせて、その時に最適なマーケティング手法をスポーツスポンサーシップにおいても取り入れて活用し、発展してきたのです。ただ闇雲にスポーツを使って派手なことをやってきたわけでもありません。

テクノロジー、それによって変化する人々の価値観、購買プロセスなんかを加味した上で、時代にあったマーケティングアプローチを採っていく。そんなコカ・コーラの戦略的な姿勢を知っていただけたらと思います。

マーケティングアプローチについては、いまが4.0手法だからといって、3.0以前が完全に無効になるわけではありません。その良さを活かしつつも、新たな要素が積み上がっていくというイメージが正しいかもしれません。コカ・コーラの2012年ロンドン五輪での”Recycle to Beat”なんかはマーケティング3.0の環境価値の訴求です。それにSNSでの拡散(横のつながり)要素を加えたわけです。

もしコカ・コーラのように確固たる軸を持ってスポーツを活用したい。でもどうやったらいいんや…みたいに悩まれていたら、是非お気軽にお声がけいただけたら幸いです。

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