今回の記事はこれまでの記事とは少し毛色が違います。どの点が違うかと言うと、スポンサーアクティベーションうんぬんの前さばきの段階にフォーカスをあてる点です。具体的には、顧客セグメンテーションターゲティングの基本的な考え方について話してみようかと思います。

実は、先日あるお客さんに言われました。「どこのスポーツチームにスポンサーしたらいいのかわかりませんよぉ」と。確かにスポーツ種、スポーツチーム、イベント、その数はめちゃあります。その中から適切なスポンサー機会を選び取るのはなかなか難儀です。

ただ、過去の記事の中で何度も言いましたが、スポンサーシップは“目的ではなく、手段”です。なんの手段かと言うと、経営課題を解決するための手段です。なので今回はスポンサー先選定の前段階にあるべき、経営課題の明確化にフォーカスします。

経営課題といっても星の数ほどありますが、今回はマーケティング領域に特化したいと思います。具体的には、自社が宣伝&販売したい商品を届けるべき顧客(ターゲット顧客)をどのように決定するか、についてです。ターゲット顧客が明確になるということは、その顧客にアプローチしていくことが経営課題となります。そしてその次の段階として、ターゲット顧客にアプローチするための手段としてどんなスポーツにスポンサーすべきなのか、という検討に入っていくのです。

今回1章~3章まではマーケティングの基礎となるセグメンテーションや、ターゲティングについてなるべく簡単に、かつ実務で使う上で十分に理解できるよう説明します。「その辺はもう知ってるからいいや」という方は、4章目からターゲットを絞ったスポーツマーケティングの具体事例をご紹介しているので、そこまでスキップしちゃってください。

1. マーケティング戦略の基本:だれに、なにを、どのように

みなさんもどこかできいたことがあるかもしれない、「だれに」、「なにを」、「どのように」。これは、マーケティング戦略の基本で、どんな顧客に、どんな商品を、どうやって売るの?を検討するときに引用されます。今回の記事ではシンプルに「商品を」、「顧客に」の2点で考えたいので、なにを、だれに、に絞って書いていきます。

2. どんな商品を(≒なにを)

ターゲットとする顧客を考える前に、宣伝&販売したい商品について知っておく必要があります。ここは自らを知るステップです。自社商品の特徴、強み、顧客の利用シーンと提供価値、想定販売価格、そんなものを棚卸ししておきます。要は、「うちの商品はなんたるか」を熟知しておくのです。

3. どんな顧客に(≒だれに)をSTPで考える

自社の宣伝&販売したい商品についてチェキしたら、どんな顧客に(≒だれに)を絞っていきます。ここではマーケティング戦略で使われる、STP分析セグメンテーション(S)・ターゲティング(T)・ポジショニング(P):をご紹介します。

STP分析なんてWeb検索した日には解説記事がしこたま出てきます。中には「STP分析はもう古い!」などと心が折れそうになる記事もあります。たしかにSTP分析は近代マーケティングの父と評されるフィリップ・コトラーさんによって1997年に提唱されており、古いと言えば古いです。

そこで、従来どおりのSTP分析を踏襲しつつも、我々の考える独自の視点も織り交ぜながら、分かりやすく、実戦で使える知識になるようお話していきます。だから、記事を閉じるのはあと5分だけ待ってください。

なお、スポーツマーケティングにおいて特に重要ということで、この記事ではSTPのS:セグメンテーションT:ターゲティングに絞って書いていきます。

3-1. STP分析の“S”:市場や顧客をセグメンテーション!!

みなさんが、この記事を閉じていないことを期待しつつ、まず最初のステップのセグメンテーションの説明に入っていきます。このステップ、端的に言うと市場や顧客を分割するステップです。世の中にいる顧客候補を分割(セグメンテーション)するのがココです。イメージで言うと、↓みたいなかんじです。

で、じゃあどうやってセグメンテーションするの?って話ですが、いくつかの軸があります。それが、人口変数・地理変数・心理変数・行動変数の4つの変数です。この4つの変数の中にもサブ変数があって、例えば、人口変数で言えば年齢、性別、世帯構成やらがあります。

例えば自己啓発書を読む人を人口変数心理変数でセグメンテーションすると↓みたいなかんじでしょうかね。ちなみに、どの軸で分割するかは自社の商品によります。例えば、日本語で書かれた書籍などが商品の場合などは、海外に売り出すことはないと思うので海外を含む地理変数はいりません。また人口規模やら気候なんかも軸としては不適切です。それならば、性別、年齢、ライフスタイル、ニーズなどを軸にセグメンテーションすべきでしょう。だから、まずはじめに自社の商品に対する理解や認識からスタートすべきなのです。

それと、これはこれまでのコンサル経験から言えることを付け加えておきます。それはセグメンテーションした顧客のニーズの深堀りがポイントっちゅう点です。例えば、上のようにのんびり生きたいとか競争に勝ち、人の上に立ちたい、とかってセグメントしたとします。次に、こういう人たちってなぜそう考えるのか?平日の昼は何をしているのか?休日はどんな店に行きたがる?みたいなニーズをさらに掘って、軸を試行錯誤で設定しながらセグメントしていくのです。こうすることで、意味があり、施策が立てやすい軸を発見し、市場の獲得がイメージしやすい顧客セグメントが浮かび上がってきます。

逆に適切な軸でセグメンテーションができないと、属性等の浅い軸での分割に留まり、事業計画にしたところで不必要に数値が低くなったりする可能性があります。適切な分割軸を見つけるためにどんどんニーズを深掘っていくと、今まで気が付かなかった観点で顧客セグメントが見えてきます。

3-2. STP分析の“T”:顧客を絞ってターゲティング!!

ここまで顧客を4つの軸でセグメンテーションしました。簡単に言うと、狙うべきターゲットの範囲とかスコープが決まったかんじです。ではでは、ここからは、どのターゲットめがけてシュートするのかを決めていきます。これがターゲティングです。

では、シュートすべきターゲットってどう決めればいいでしょうか。そのためには仮説を立てて検証する、です。じゃあどうやって仮説を立てて検証するんだよ?って話です。

ここまでアナタは宣伝&販売したい商品について頭の中に叩き込みました。次に軸を設定し、お客さんをセグメンテーションしました。するとだいたい頭の中で、「この商品ならこんな人が買うんじゃねーかな」って仮説が立っているハズなんです。

例えば日本にいまスターバックスがないとします。アナタはスターバックスをアメリカから日本に輸入し、国内展開する担当者です。アナタの頭の中には「スタバって言ったらスタイリッシュでしょ」、「ちょい高めのコーヒーやらラテ出すっしょ」というような商品理解を持っているハズです。

そして、顧客をセグメンテーションする際にも、「人口変数は20-30代、もしくは40代~の人だよなぁ」、「地理変数は都市部の人だよなぁ」、「ニーズで言ったらスタイリッシュな空間で1~2時間過ごしたい、みたいな人たちだよなぁ」みたいなことを思いながら有意なセグメンテーション軸で切って、お客さんを想像しているハズです。

ちゅうことは、すでに頭の中にターゲティングすべき人が想像できているのではないでしょうか。

このようになんとなく「こんな人たちがお客さん」って想像できていると思います。それを検証していきます。検証とはターゲティング候補となった顧客セグメントを、規模やら成長性で絞り込んでいくことです。その際に使われるのが6Rという指標です。

Realistic Scale(市場規模)は、顧客(市場)規模は十分な大きさがあるのか。Rate of growth(成長性)は、顧客(市場)規模は今後成長するのか。Rival(競合状況)は、競争が激化していないか。Rank(優先順位)は、ユーザーにとって優先度が高いものか。Reach(到達可能性)は、顧客に商品を届けられるのか。Response(測定可能性)は、顧客の反応を測定できるか。

ここで特に重要なのはRealistic Scale(市場規模)Rate of growth(成長性)Rival(競合状況)の3つです。
なぜなら、そもそも市場規模がなければ、顧客がいないってことなんで狙う意味はありません。またその市場が縮小or無くなるなら、参入しても継続的な顧客に出会えない可能性が高くなります。あと、その市場に強力なライバル企業がいたら、一瞬で駆逐されちゃうかもしれません。

例えば、アナタが都市部で働く20代以上のビジネスマンをターゲットにスーツを売ろうとしたとします。いま、スーツを着る人は年々減少しており、市場は縮小傾向です。ポロシャツやらTシャツ出勤する人なんてザラにいます。しかも、このコロナ禍によってその傾向に、拍車がかかっています。そんなスーツ販売市場では、ライバルもひしめき合っています。なので、今からターゲティングする市場としてはあまり魅力的ではないと言えます。

ちなみに、Realistic Scale(市場規模)をざっくり評価するために使うべき要素があります。それは、①顧客の数、②顧客が~したい!って思う頻度、③顧客の~したい!という思いの強さです。この3つの掛け算で市場規模は大方決まってくるのです。

例えばガン治療に使われる薬の場合。国内では男女ともにガン患者数はずっと増加傾向であり、2020年では約100万人が罹患しています。そしてこのガン患者の方々や家族が「ガンを治したい!」と思う頻度は相当多いと思われます。1日に何度もガンが治ることを願うはずです。またその思いの強さも相当なものでしょう。つまり、ガン患者=顧客(市場)規模は大きく、ガン患者の、治癒したい!という思いの回数は多い&強い。だから市場規模が大きく、製薬会社が新薬の開発を頑張っているわけです。

3-3. セグメンテーション&ターゲティングの次のステップ

ここまでが狙うべき顧客をターゲティングする、って話でした。要は、どのターゲットめがけてシュートするかが決まった状態です。そしてこれは冒頭で言った、マーケティングにおける経営課題が定まっている状態です。「ウチの経営課題はあのターゲット(顧客)にリーチすることやでぇ!」って。ここまで決まればあとは、そのターゲット(顧客)にリーチするためのマーケティング施策を考えます。スポーツマーケティング施策を検討していて、新たなスポンサーとしてパートナーを選定する場合。まずはパートナー候補となるスポーツ団体のファン属性等を見て、自社のターゲットとの親和性を評価することになります。

4. スポーツマーケティングにおけるターゲット別施策事例

スポーツマーケティングにおいて、自社ターゲット顧客と各スポーツ団体のファン属性の親和性を評価したあとは、実際にどのような施策でアプローチするのかを検討する段階に入ります。ここでは、弊社が過去に分析した事例として、富裕層をターゲティングした施策事例と、若年層をターゲティングした施策事例をご紹介します。

4-1. 富裕層をターゲティング

スポーツマーケティング事例を見渡すと、戦略的に顧客ターゲットを絞り、スポンサー先を選定している事例が多くあります。例えば大手金融機関のHSBC。HSBCの本業は銀行ですが、銀行って他行との差別化が難しい業種なんです。

そんな中、銀行は太客をゲットすることが一つの経営課題です。銀行で言う太客とは富裕層のことです。富裕層はまず口座にたくさんお金を預けてくれます。また、資産運用を任せてもらえたり、節税対策と言って金融商品を買ってもらったりと、1度で何度でもおいしいお客さんなのです。

そこでHSBCは富裕層にターゲティングします。そしてファンに富裕層が多いゴルフ大会にスポンサーして、富裕層にアプローチすることにしたのです。

こちらの事例については以下の記事に詳しく書いてありますので是非チェキしてみてください。

4-2. 若年層をターゲティング

続いて、ハンバーガーチェーンのお話です。大手ハンバーガーチェーンのウェンディーズは若年層獲得に苦戦していました。なぜ苦戦していたかと言うと、マクドナルド、バーガーキングなどと比べるとウェンディーズって少し高めなんです。だから低価格帯を好みがちな学生などの若年層から、あまりウケがよろしくなかったのです。

そこでウェンディーズは若年層を取り込むために、学生スポーツとSNSを使って若者にアプローチしていきます。

この事例についても以下の記事で詳しく説明してあります。

加えて、SMBCとサッポロビールも若年層、いわゆるジェネレーションZ(1997年以降生まれ)にアプローチしています。この2社はこの層へのアプローチ手段として、eスポーツを活用しています。この事例の詳細については以下の記事で説明しています。

5. おわりに

いかがでしたでしょうか。今回はスポンサー先を決める前の前さばき。つまり、宣伝&販売したい商品を届ける顧客をターゲティングするやり方について書いてみました。

何度も言うよ残さず言うよ、で申し訳ないのですが、スポンサーシップとは経営課題を解決するための手段です。自社として何がしたいのかor何をしなければならないのか、を明確にすることが先です。そしてその次に手段となるスポンサー先の選定がくるのです。たしかに、先にスポンサー先を決めて経営課題を後付けするという事例もあります。ただ、無理やり経営課題に結びつけているので、経営課題の解決度合いでいうと、効果が薄くなってしまいます。どうか経営課題→スポンサー先選定、という流れで考えてみていただけると、これ幸いです。

これはスポーツチームについても同じです。企業にスポンサーをお願いする際はその企業の経営課題に思いを馳せてみると、より刺さる提案ができるのではないでしょうか。

自社商品のターゲットが定まらない、スポーツチームのファン属性の分析ってどうやるの?という企業の方。自チームのファン属性は理解しているが、どのような企業とパートナーになればwin-winの関係になれるの?というスポーツチームの方。もしよろしければご相談に乗りますのでお気軽にお問い合わせ頂ければ嬉しいです!