これはある企業の方とワタシのやり取りです。
ある企業の方:「Jリーグの観戦者レポート以外でJクラブのファン像がわかる方法ってあります?」
ワタシ:「現時点ではありません。でも…」
ある企業の方:「でも…?」
ワタシ:「いま開発中のうちのシステムならできるかもしれません」
この方のような悩みを抱えてらっしゃる方はけっこう多い気がします。スポーツチームのスポンサーを検討している。でもファン像のペルソナがわからないから、スポンサーに踏み切れない。どんな人達(ファン)にリーチできるかわからないので。
スポンサー先を選ぶ視点、スポーツチームが持つ資源は様々ありますが、1つ重要な要素として上げられるのがチームの抱えるファンです。チームのファン層がどんなペルソナなのか把握しておくことは効果的なパートナー関係を構築する上ではとても大事です。男性or女性が多い?男性だったら学生なの?ビジネスマンなの?このファンの関心事は何?みたいに。
実はスポーツ団体が興行、アカデミー、スポンサー、物販等から得る収入の源泉は全て“ファン”に起因します。
今回はこのスポーツチームとスポンサーにとって、全ての源泉となるファン層に関するお話です。
具体的には2つJクラブを“ファンの興味・関心”を分析し、比較してみました。名付けて「ファン分析ダービー」です。
今回は多摩川を挟んで対峙するFC東京と川崎フロンターレの多摩川クラシコです。
なお、最後に「ファン分析ダービー」シリーズの他の記事もご紹介するので、興味の有る方は最後までスクロールお願いします!
それでは参ります!
目次
1. Jクラブのファンの興味関心を分析する
まずはどうやってファンの興味・関心を分析するんじゃい!って話です。
例えば有名どころだとJリーグが出しているスタジアム観戦者調査サマリーレポートなんかがありますね。これなんかは観戦者の性別、年齢、居住地なんかの基礎的な属性を知ることができます。
ただ、ファンがそのチーム以外に何に興味を持っている人が多いか、まではこのレポートではわかりません。例えばあるチームのファンは“健康意識が高い”、“おしゃれに敏感”、“資産運用に興味がある”とかまでは追えないわけです。
このファンの興味・関心を見える化するため、我々は夜なべしながらある社内システムを開発しています。名付けてSPOVA SNSアナライザー。名前、ダサくね? そう思ったアナタ。名前はまだ仮称ですが、もし良きなネーミングがあればご連絡ください。ミラクルロマチックSNS分析マシン1号、みたいなクールなネーミングを思いついちゃったら方。ご連絡まってます。
さてさてこのSPOVA SNSアナライザー、どんな機能があるのかって話です。↓は現時点のトップページの画像です。左端タテにJクラブのチーム名が並んでいます。そしてそれぞれに100%バーグラフがあります。これは各クラブの公式アカウントのフォロワーが他に何をフォローしているのか、を表しています。
構造的に説明すると↓みたいなかんじです。例えば各クラブの公式アカウントフォロワーのうち、他のJクラブやらサッカー選手をフォローしていたらスポーツ系への興味+1として分類、カウントします。銀行やらメーカー、またその商品のアカウントをフォローしてたら企業・商品/サービスへの興味+1とカウントしています。
もちろんフォロワーは複数の別アカウントをフォローしています。例えばサッカーチームの公式アカウントをフォローしつつ、お笑い芸人をフォローしていたりとか。この場合はスポーツ系に興味+1、芸能人・有名人に興味+1、とカウントしています。
こんな分析をすることで、各クラブ公式アカウントのフォロワー達(≒ファン)が他にどんな分野に興味・関心を持っているのか、がわかります。さらに、各分野の中で、具体的にどんなアカウントが多くフォローされているのかも分かります。例えばスポーツ系に分類されるアカウントであれば、あるクラブのスポーツ好きフォロワー達(≒ファン)はテニス選手Aをフォローしている(≒関心がある)割合が大きいぞ、とか。あとは企業・商品/サービスの中でも美容系商品のフォロー数が多ければ、美意識高めの人がフォロワーに多いぞ。ってことは20-30代のキラキラ女子がファンに多いんじゃね?みたいな想像も膨らみます。要は、今まで見えなかったファンの顔がおぼろげながら見えてくるってことですね。
で、ファンの顔が見えてくるとともに、明確になるものがあります。それはチーム単体、もしくはスポンサーと組んで行う施策です。例えば20-30代のキラキラ女子がファンに多いとします。それなのにスタジアムの外でアツアツおでん早食いイベントとかやってもおそらくウケません。“化粧がくずれんだろーが”と敬遠されてしまいます。ならば美容やらファッション関連の施策を打ったほうが満足度は上がります。既存のスポンサーでそれができないなら、「うちのチームはキラキラ女子がファンに多いんですよ」っていいながら美容系のスポンサーを連れてくるってアイデアも生まれます。
このようにどんな興味・関心を持つファンが多いのか、を知ることはかなり大事なポイントです。そしてこれを可能にしたのがSPOVA SNSアナライザー(ミラクルロマチックSNS分析マシン1号)なわけです。
ちなみに各クラブの100%バーの分類をクリックすると下段にフォロワーが多い順に表示されます。↓の図は浦和レッズの企業・商品/サービスをクリックした状態の画面です。フォロー先としてはローソン、ファミマというコンビニがTop2ですね。あとはマクドナルド、スタバなどのファーストフード系なんかへの関心が高いってのも読み取れますね。
2. SNS多摩川クラシコ:FC東京vs川崎フロンターレ
“んなこと知ってらい!”って声も聞こえそうですが、簡単にサッカーにおけるダービーについて説明しときます。ダービーとは、ある共通のものを持ったクラブ同士が対戦する試合を言います。わかりやすいのが本拠地が同じ都市同士の戦いですね。ダービーは日本だけでなく、世界中に存在します。例えば、スペインのサッカーチーム、FCバルセロナとレアルマドリードのダービーである”エル・クラシコ”は世界中が注目するダービーです。(出典:SPAIA | ダービー・マッチを知ろう イングランドプレミアリーグ編、スペインサッカーの伝統の一戦「エル・クラシコ」 その背景にあるものとは)
今回は、J1リーグ所属のFC東京と川崎フロンターレの”多摩川クラシコ”です。FC東京と川崎フロンターレは共に多摩川沿いを本拠地とするチームです。両クラブを分ける象徴である「多摩川」と、スペインでいう「伝統の一戦」の意味の「クラシコ」を合わせ「多摩川クラシコ」と命名されました。「多摩川クラシコ」の名称でスタートしたのは、2007年から。しかし激しい戦いを繰り広げてきた歴史を大事にするために、1999年のJ2元年の戦いから「多摩川クラシコ」としてカウントしているそうです。歴史がありますね。(出典:多摩川クラシコ | 多摩川クラシコとは)
ではではさっそく、SNS多摩川クラシコを見ていきましょう!下の図は、SPOVA SNSアナライザーからFC東京とフロンターレのデータを抜き出したものです。
両チームとも「スポーツ系」のカテゴリが最も多くFC東京では約5割、フロンターレでは約4割となっています。次に多いのが「企業・商品/サービス」のカテゴリで、FC東京で1割弱、フロンターレでは2割弱を占めます。3番目に多いのが、「芸能人・有名人」のカテゴリで、両チーム1割弱という結果になっています。
全体を俯瞰すると、2チームのフォロワーの興味関心に違いがあることが分かります。特に「企業・商品/サービス」への関心度に違いがありそうです。
では、もう少し詳しく見ていきましょう。ここからは、各カテゴリにフォーカスして見ていきます。
2-1. スポーツ系(選手、団体含む)
まずは、「スポーツ系」カテゴリから。FC東京をフォローしている人の53.74%が「スポーツ系」のアカウントをフォロー。対するフロンターレは41.44%で、その差は12.30%。
下の表は、各チームのフォロワーが「スポーツ系」カテゴリでフォローしているアカウントの上位5つを抜き出したものです。
どちらのチームもお近くの横浜F・マリノスを意識しているようです。
FC東京では3位に川崎フロンターレ、4位に鹿島アントラーズが入っています。一方で川崎フロンターレでは、3位に中村憲剛、5位に日本代表がランクインしています。FC東京ファンは川崎フロンターレを意識しているけど、フロンターレのファンはそこまでFC東京を気にしてないようです…。どっちかと言うと、ミスターフロンターレ中村憲剛選手や日本代表のほうが興味あるようですね。
2-2. 企業・商品/サービス
続いてみていくのは、「企業・商品/サービス」カテゴリです。FC東京をフォローしている人の8.97%が「企業・商品/サービス」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは16.74%で、その差は7.77%。
各チームのフォロワーが「企業・商品/サービス」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのか見てみましょう。
どちらのチームもそれほど大きな違いはありませんね。主な顔ぶれはローソン、マクドナルド、セブンイレブン、ファミリーマート。他のJクラブのフォロワーをみてみると、スポーツ動画サービスやコンビニ・ファーストフード系をフォローしている人はけっこう多いです。なので、FC東京4位のスカパー、フロンターレ3位のスタバは納得できます。
2-3. 芸能人・有名人
続いては、「芸能人・有名人」カテゴリです。FC東京をフォローしている人の7.61%が「芸能人・有名人」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは8.60%でその差は0.99%。
各チームのフォロワーは「芸能人・有名人」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのでしょうか。
フォロワーの多さからまっちゃん、有吉弘行さん、浜辺美波さんが入っているのは納得です。フロンターレをみると菅田将暉や佐藤二郎も人気ですね。
一方FC東京では田村淳や永野芽郁がランクインしています。ロンブー淳さんは他のJクラブでも見ますが、5位の永野芽郁さんはけっこう珍しいです。彼女は『第94回全国高校サッカー選手権大会』の11代目応援マネージャーを務めていました。(出典:SOCCERKING | “登竜門”高校サッカー選手権応援マネ、永野芽郁に決定「笑顔を絶やさずサポートを」)そんな経緯から5位にランクインしたのかもしれないです。
2-4. メディア・ニュース・ポータル
続きましては、「メディア・ニュース・ポータル」カテゴリ。FC東京をフォローしている人の6.45%が「メディア・ニュース・ポータル」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは6.98%で、その差は0.53%。
これはなかなか注目ポイントですが、順位は少しだけ異なるものの上位5メディアはまったく同じですべてサッカー関連です。FC東京、フロンターレのファンはガチサッカー好きが多そうですね。
2-5. ユーチューバー
続いては、今をトキメク「ユーチューバー」カテゴリです。FC東京をフォローしている人の5.96%が「ユーチューバー」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは6.10%で、その差は0.14%。
各チームのフォロワーが「ユーチューバー」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのか見てみましょう。
ざっと見た感じ、両チームとも有名どころのユーチューバーが並んでますね。ヒカキン強し。フロンターレでは東海オンエアのてつやが入っています。これは他のJクラブファンでも根強い人気があるので、それほど珍しくありません。
一方、FC東京には、3位にコハロンがランクインしています。コハロンはゲーム実況者であると同時に、FC東京の熱狂的サポーターなんです!FC東京の観戦動画や他チームの熱狂的サポーターとコラボを行い、J1ドラフト会議を行ったりしています。
2-6. ゲーム・アニメ・漫画
「ゲーム・アニメ・漫画」カテゴリです。FC東京をフォローしている人の3.99%が「ゲーム・アニメ・漫画」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは6.47%で、その差は2.48%。
各チームのフォロワーが「ゲーム・アニメ・漫画」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのか見てみましょう。
フロンターレに関しては鬼滅の刃を除けば全てゲームのアカウントがフォローされていますね。FC東京も上位3つがゲームのアカウントなので、両チームのフォロワーにはゲーム好きな人が多いのかもしれませんね。
注目すべきは、FC東京の5位に特務機関NERVがランクインしているということ。このアカウントはゲヒルンという会社によって運営され、主に地震などの災害情報を発信しています。その他にも気象情報、電車遅延などの生活情報も発信しています。気になるのはこのアカウントの名前です。「特務機関 NERV」ってなんじゃ?これは人気アニメシリーズ新世紀エヴァンゲリオンに登場する組織で、このアニメの主人公が所属しているそうです。もしかしたらFC東京ファンには防災意識が高い、エヴァ好きの人が多いのかもしれないです。
2-7. グラビア・アイドル・モデル
「グラビア・アイドル・モデル」カテゴリを見ていきましょう。FC東京をフォローしている人の4.11%が「グラビア・アイドル・モデル」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは4.01%で、その差は0.10%。
各チームのフォロワーは「グラビア・アイドル・モデル」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのでしょうか。
両チームとも、人気のグラビア・アイドル・モデルがランクインしているといった感じですね。FC東京では藤田ニコルが5位にランクインしています。彼女については他のJクラブでもよくランクインしてきます。
ただ、フロンターレ5位の日向坂46は他のクラブではなかなかランクインしないレアキャラです。実は日向坂46には富田鈴花さんというメンバーがいます。彼女は川崎出身で幼少期にエスコート&フラッグキッズをしたこともあるそうです。また等々力スタジアムのゲートフラッグに彼女の絵が使われたこともあり、フロンターレファンにはお馴染みのアイドルのようですね。
2-8. 映画・テレビ・ドラマ
続いては「映画・テレビ・ドラマ」カテゴリ。FC東京をフォローしている人の4.39%が「映画・テレビ・ドラマ」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは4.80%で、その差は0.41%。
各チームのフォロワーは「映画・テレビ・ドラマ」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのでしょうか。
フロンターレファンはサッカー系の番組の他に様々なジャンルを扱うABEMAをフォローする人の割合が多いようです。一方、FC東京はすべてサッカー関係です。FC東京のファンはサッカーガチ勢が多そうです。
2-9. アーティスト・ミュージシャン
「アーティスト・ミュージシャン」カテゴリを見ていきます。FC東京をフォローしている人の2.94%が「アーティスト・ミュージシャン」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは3.10%で、その差は0.16%。
各チームのフォロワーが「アーティスト・ミュージシャン」カテゴリのどんなアカウントをフォローしているのか見てみましょう。
両チームともに、あいみょん、米津玄師、きゃりーぱみゅぱみゅをフォローする人が多くなっています。
FC東京では星野源や上白石萌歌へのフォローが多くなっています。お2人とも俳優/女優としても活躍しているので、FC東京ファンはドラマ好きが多かったりするのかもしれません。上に出てきた永野芽郁さんもドラマによく出演されているので、この推察はあながち間違っていないかと。
一方フロンターレファンは流行りのアーティストであるLiSAや井口理(KingGnu)へのフォローが多いです。お2人ともここ2年くらいで人気が急上昇している印象なので、フロンターレファンは流行に敏感な人が多いかもですね。あと、LiSAと言えば“僕を~、連れて~、進め~”の鬼滅の刃です。なので、鬼滅ファンがより多いのかもしれません。
2-10. 有名個人
最後は、「有名個人」カテゴリです。FC東京をフォローしている人の1.83%が「有名個人」のアカウントをフォローしています。対するフロンターレは1.78%で、その差は0.05%。
これについては両チームとも似ていますね。FC東京ファンはサッカー系個人2名(青赤好きルミ姉、Tom75087067)、笑える系個人3名(坊主、Testosterone、カマたく)という内訳です。
一方フロンターレはサッカー系個人2名(サッカースパイク Kohei’sBLOG、tkq)、笑える系個人3名(坊主、Testosterone、しぬこ)となってます。
2-11. 多摩川クラシコまとめ
2チームのファンの興味・関心を端的にまとめると以下のようになりますかね。
こうやって見てみると面白い示唆がけっこう見つかりましたね。例えば、FC東京ファンはドラマに出ている人をフォローしがち、とか。
このように、ファンの興味・関心を分析してみるとファン像をより手触り感をもって思い浮かべることができます。そしてこのより具体的なファン像によって、有効な施策の輪郭も明確になってきます。
例えばFC東京ファンのドラマに出てる女優・俳優に関心が強いという側面。この特徴を活かすなら、例えば芸能事務所とのタイアップなんかが考えられそうです。あとはドラマにFC東京の選手を使ってもらったり、味スタを撮影場所にしてもらうよう交渉するとか。
また、多くの側面で両チームの興味・関心が近いというのも面白い示唆だと思います。川崎フロンターレとFC東京がお互いのファンの興味・関心の共通点で何かコラボしてみると相乗効果があって面白いかもしれません。(川崎フロンターレファンももっとFC東京に関心を持つかも?)
3. おわりに
いかがでしたでしょうか。フォロワー分析を通じて、FC東京とフロンターレファンの“横顔”みたいなものが見えてきた、と感じていただければこれ幸いです。
実は各カテゴリにおいて今回は紹介できなかった5位より下の順位をみていくとさらにファン像が明確になったりします。例えば「芸能人・有名人」カテゴリで松本人志、菅田将暉、有吉弘行、浜辺美波、なんかは超ポピュラーな人なのでどのチームをみても上位を独占します。ただ5位より下をみてみると、チームのファンの違いがより色濃く出てきて、ファン像が想像しやすくなります。
もしこのSPOVA SNSアナライザー(超ミラクルロマチックSNS分析マシン1号)を使って、「他のチームも比較してみたい」、「あのチームのファン像をより詳しく分析したい」というチーム関係者さま、スポンサー企業さま、広告代理店・コンサル・メディア企業さま、もしくは熱烈な分析マニアサポーターさまがいらしたらご連絡いただければと思います。
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なお少し前に、今回と違うダービーシリーズもご紹介しました。
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SPOVA DB【企業・業界分析編】
SPOVA DB【コンテンツホルダー分析編】