2011年FIFA女子ワールドカップでサッカー日本女子代表が優勝してから今年で10年。早いものです。我らがなでしこJAPANが優勝したのは東日本大震災から3ヶ月後のことでした。当時、悲しみに打ちひしがれていた日本に大きな感動を与えてくれたことを今でも覚えています。
今回は世界を見渡して、どんな企業がサッカーにスポンサーし、どのように使っているのか、ってお話です。
SPOVAでは毎日せっせと国内外のスポンサーアクティベーション事例を調査、ストックしています。2003年くらいから直近まで約2万件以上の事例を社内データベースに溜め込んでいます。
我々はこのデータベースを使って、
「どんなスポンサーアクティベーションの効果が大きかったか?」
「海外のスポーツ先進国では企業がどのようなスポーツの使い方をしているか?」
「スポンサー企業の業種、スポーツ競技、地域といった分類ごとに、スポンサーの取組に特徴はあるのか?」
「A企業と、競合のB企業のスポンサー事例を比べると、SNSでの反響の違いはあるのか?」
などの分析を行っています。
今回の記事はこのデータベースの中から、2015年以降でサッカーにスポンサーした海外事例のうち、社会的反響が大きかった事例Top5をご紹介します。冒頭でお話した女子サッカーの事例も出てきます。
それでは参ります!
目次
- 1. SPOVA DB(データベース)とはなんぞ?
- 2. 興味スコアTop5スポンサー事例(世界のサッカースポンサー編)
- 2-1. 【5位】Everton agree ‘UK£10m a year’ Hummel kit deal[2020年5月20日]
- 2-2. 【4位】Paddy Power brokers first shirt sponsorship deal with Huddersfield Town[2019年7月15日]
- 2-3. 【3位】Everton Women net MegaFon as new shirt sponsor[2020年10月29日]
- 2-4. 【2位】Ada Hegerberg lands ten-year Nike deal worth ‘more than €1m’[2020年6月9日]
- 2-5. 【1位】Women’s Eredivisie nets ING as first sponsor[2020年8月28日]
- 2-6. 【まとめ】興味スコアランキングTop5
- 3. おわりに
1. SPOVA DB(データベース)とはなんぞ?
注目度(≒SNSでの反響)の大きかった海外サッカー・スポンサー事例をご紹介する前に、このデータベースについてちょろっと説明しておきます。
このデータベースの機能をカンタンに表現すると、「国内外のスポンサー事例を集約、分析したシステム」です。名付けて(仮)SPOVA DB(データベース)。現時点で、名前は仮称です。もしかしたら「名前だっせぇ」と思った方がいらっしゃるかと思います。繰り返します。名前は仮称です。それに現状は社内システムなんす。
ところで、みなさんも過去にこんなこと思ったことないでしょうか。
「あの会社はどのチームにスポンサーして、どんなことやってんの?」
「海外の有名クラブはどんなスポンサー企業を獲得してんの?」
でも同時にこうも思ったのではないでしょうか。
「スポンサー事例を探して分析すんのだるいわぁ…」
我々のSPOVA DBはそんな作業をラクにするために社内用に開発したデータベースです。
下の図はシステムのトップページです。上段には国内、下段には海外事例が並べられ、最新スポンサー事例を一覧で見ることができます。
そしてこの2万件以上の国内・海外事例を「企業・業界」&「コンテンツホルダー(スポーツチーム・団体など)」視点で分析することができます。
要はこういうことです。企業・業界分析では、業界や企業別にスポンサーしているスポーツチームを見ることができます。企業・業界別にどのスポーツチーム・団体にスポンサーしているか?がわかります。
具体的にはってことで、ちょっと前に企業・業界分析の記事をお出ししましたので、気になる方はポチッと願います。
逆にコンテンツホルダー分析では競技種目とそのスポーツチーム別に獲得しているスポンサーを見ることができます。競技・スポーツチーム・団体別にどんなスポンサーを獲得しているか?で事例を抽出できるってわけです。
加えて、事例の効果(SNS反響、売上・営業利益への影響)を起点に分析できるページもあったりします。
今回の記事では「コンテンツホルダー分析」に絞ってご紹介します。
1-1. コンテンツホルダー分析で何ができる?
繰り返しますが、コンテンツホルダー分析では、競技種目やスポーツチーム別にどんなスポンサーとどんなことをしているか?を見ることができます。コンテンツホルダー分析という文字の下にある「国内」ボタンをポチっとすると以下の画面に遷移します。
ここでは競技種目・スポーツチーム別にスポンサー事例を絞ることができます。例えばJリーグチームで絞る場合はこんなかんじです↓。
例えば2020年シーズンのJ1チャンピオン川崎フロンターレで絞ってみます。するとこんなふうに表示されます。フロンターレがどんなスポンサーとパートナーシップを結んでいるのか、が上段に。下段にはそれに紐づく事例が一覧で並ぶっちゅうわけですね。
スポーツチームよりももう少し大きい単位の競技種目で絞る場合はこんなかんじでフィルタリングできます。現時点ではサッカー、バスケのみですが、将来的に野球、ラグビー、卓球などを追加していく予定です。
例えばサッカーで絞るとこんなかんじです↓。事例としてはナイキ、日清オイリオ、帝人なんかの事例が表示されてますね。
1-2. 社会の注目度を表す興味スコア
下段に表示されるスポンサー事例ですが、表示される順番は日付が新しいものから、というわけではありません。表示順を決めるのは下段の右にある興味スコアなるものです。
これは各記事の発信元SNSアカウントが投稿した当該記事に対して、どれだけエンゲージメント(コメント、リツイート、いいね)があったか、で算出しています。各エンゲージメント指標はその重要度に応じ、統計学的に妥当と考えられる調整をしてスコア化しています。
ごちゃこちゃと難しく語りましたが、要は“どんだけSNS上で反響があったか”を測る指標ってわけです。正直なところ、スポンサー事例は山ほどあります。海外までその範囲を広げればその数は膨大なものになります。そしてその多くは世間からまったく注目されない事例だったりします。そういった事例を見るよりも、社会的な注目を集めた事例を上から表示できる。それが興味スコアってわけです。
ここまで説明したことと同じようなことが海外のコンテンツホルダーについてもできます。↓にあるように海外のスポンサー事例を競技種目、スポーツチーム(リーグ、団体)で絞り込むことができるってわけであります。
ざっと見ていただければわかりますが、プレミアリーグ、NBA、MLS、フォーミュラ1なんかが並んでますね。これらの団体ごとにどんな会社とパートナーシップを結んでいるのかがわかるのがSPOVA DB(データベース)ってわけです。
2. 興味スコアTop5スポンサー事例(世界のサッカースポンサー編)
ここまででSPOVA DB(データベース)のコンテンツホルダー分析について「ほぅ。こんなシステムあるんか」とご感心いただければ本望でございます。
ではではここからが本題である、2015年以降でサッカーにスポンサーした海外事例のうち、社会的反響が大きかった事例Top5をご紹介していきます。
以下の5つが興味スコアTop5の事例となります。
2-1. 【5位】Everton agree ‘UK£10m a year’ Hummel kit deal[2020年5月20日]
まず5位にランクインしたのは、イギリスのプロサッカーチームEvertonとスポーツアパレルブランドのHummelがスポンサー契約を締結したというニュースです。
Hummelはデンマークの企業で、主にサッカーやハンドボールの商品を取り扱っています。世界で初めてスタッド付きサッカースパイクを開発したのがHummelだとか。サッカーのスパイクの裏ってボコボコ~ってなってますよね。あれを開発したんですって。(出典:Hummel | HP)
そんなHummelがスポンサー契約をしたのは、Everton。Evertonはイギリスプレミアリーグ所属のチームで、LiverpoolにあるEvertonというエリアをホームタウンとしています。
HummelはEvertonと3年間のユニフォームスポンサー契約をしました。その額なんと1年につき約13億円!前シーズンまでユニフォームスポンサーだったUmbroとの契約の2倍以上の額だそうです。Hummel攻めてますねぇ。それだけスポーツアパレルブランドにとってユニフォームスポンサーは効果が大きいということでしょうか。
このニュースは日本からも反響がありました。
ちなみに、Liverpool地区には同じプレミアリーグ所属のLiverpool FCもありますよね。EvertonとLiverpool、共にLiverpoolを拠点とする2チームの対決をMerseysideダービーと呼ぶそうです。(出典:BBC SPORT | Everton produced an outstanding Merseyside derby performance to beat Liverpool at Anfield for the first time since 1999.)
2-2. 【4位】Paddy Power brokers first shirt sponsorship deal with Huddersfield Town[2019年7月15日]
4位は、Paddy Powerという企業とHuddersfield Townというサッカーチームがパートナーシップを締結したというニュース。
Paddy Powerはアイルランドのブックメーカーです。ブックメーカーと言っても本を製造する企業ではありません。海外ではスポーツベッティングの主催会社のことをブックメーカーと呼びます。(出典:The Drum | Paddy Power、ザ・ブックメーカーズ | ブックメーカーとは?海外版サッカーくじの登録方法・日本での合法性を解説!)
Huddersfield Townはイギリスのプレミアリーグ2部に相当する、EFLチャンピオンシップというリーグに所属しています。ホームタウンはイギリスウェスト・ヨークシャー州のHuddersfieldというロンドンの北に位置する街です。2021年3月26日現在のHuddersfield Townの順位は、18位。(出典:Huddersfield Town | DIRECTIONS)
Paddy Powerは2019/20シーズンにHuddersfield Townのメインユニフォームスポンサーを務めました。ユニフォームの前面へ斜めに社名を載せるという斬新なデザイン。かなりインパクトがありますね。(出典:The Drum | Paddy Power brokers first shirt sponsorship deal with Huddersfield Town)
でも実は、このユニフォームはフェイクだったのです!Paddy Powerはサッカーのユニフォームスポンサーは”行き過ぎている”と主張し、“行き過ぎている”というのを上のフェイクユニフォームで風刺的に表現しました。”行き過ぎている“例を出すと、フランスのプロサッカーリーグ2部に所属するFC Chamblyというチームのユニフォーム。これでもか!ってくらいスポンサーロゴを入れまくってます。確かに”行き過ぎている”感はありますよね…
Paddy Powerはこうしたサッカー界の”行き過ぎた”スポンサーシップに抗議の意を込めてアクティベーションを行いました。こんな”行き過ぎた”ユニフォームより、ロゴのないユニフォームの方がカッコいいだろ?という具合に。
Paddy Powerがフェイクの旨を発表したネタばらしツイートは、約9千件のリツイートと約2.7万件のいいねがつきました。激バズり!!!騙された~!
2-3. 【3位】Everton Women net MegaFon as new shirt sponsor[2020年10月29日]
3位はまたまたEvertonです。ただ、3位にランクインしたのはEvertonの女子チーム。MegaFonという企業がEverton女子チームのユニフォームスポンサーになったという話題です。
MegaFonはロシアの通信事業会社です。日本でいうとソフトバンク、ドコモ、KDDIみたいなかんじですね。
Everton女子チームの歴史の中で、このMegaFonとの契約は最も大きい契約になったそうです。さらにMegaFonは女子チームのユニフォームスポンサーだけでなく、2017年から男子チームのスポンサーでもあるのです。さらにさらに!約4億5千万円でEverton新スタジアムのネーミングライツも購入。…MegaFonのEverton全力推し具合ヤバイ。
2-4. 【2位】Ada Hegerberg lands ten-year Nike deal worth ‘more than €1m’[2020年6月9日]
2位に輝いたのは、Nikeがノルウェー出身のAda Hegerbergと10年の大型スポンサー契約を締結したというニュースです。そのスポンサー金は1億2千万円以上と言われています。
Ada Hegerbergは、2018年にフランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」が選ぶバロンドール(世界最優秀選手賞)の女子部門初の受賞者になりました。バロンドールはサッカー界で最高の名誉の1つと言われており、男子部門ではメッシやクリロナといった世界的大スターが過去に受賞しています。(出典:BBC NEWS | 女子初代バロンドール受賞者にDJが謝罪 質問に「性差別的」と批判、ゲキサカ | メッシ「C・ロナウドとバロンドールが同数だったのは苦痛だったが…」)
男性サッカー選手と女子サッカー選手の賃金格差解決への大きな一歩になり得るのでは、ということで注目を集めたのではないかと思われます。
2-5. 【1位】Women’s Eredivisie nets ING as first sponsor[2020年8月28日]
見事、興味スコアランキング1位に輝いたのは、INGという企業とオランダサッカー協会についてのニュースです。
INGはオランダの銀行です。INGは2000年からオランダサッカー協会とオランダ男子プロサッカーリーグにスポンサーしています。このスポンサー契約の延長をしたというのが1つ。もう1つが、今までのINGとの契約に女子プロサッカーは含まれていなかったが、2020年から女子プロサッカーリーグへのスポンサーが含まれるようになる。以上の2つの話題が入ったニュースがランキング1位になりました。
オランダ女子サッカーは世界トップレベルです。2021年3月現在FIFAランキング4位。2017年にはUEFA欧州女子選手権で優勝し、現ヨーロッパチャンピオン。(出典:FIFA.com | WOMEN’S RANKING)
こちらもサッカー界における、男女格差解決への大きな一歩であるとして反響を呼んだのかもしれません。
2-6. 【まとめ】興味スコアランキングTop5
以上が、世界のサッカーへのスポンサー事例Top5でございました。記事を書いてみてワタシも少し驚きましたが、上位3事例が女子サッカー関連でした。
実は日本ではあまり報道されませんが、海外ではサッカー選手の男女間の賃金格差が問題になっています。米国では男子の代表選手には1試合あたり約147万円支払われるそうです。一方、女子選手に支払われる金額は1試合あたり約55万円とのことです。男子の約1/3ですね…。(出典:REALSPORTS | 男女格差は差別か、正当か? 女子サッカー米国代表の訴訟問題が問い掛けるものとは)
この問題についてはスター選手も声を上げています。2021年3月24日、米国サッカー界のスター選手、ミーガン・ラピノーさんがホワイトハウスで男女同一賃金を訴えています。
このように世界では女性選手の低賃金が問題視されつつあるのです。このような中で女子サッカーにスポンサーするということは社会的な大きな関心事となり、SNSで反響が大きくなるのかもしれません。
昨今は特にヨーロッパを中心に、SDGsなどへの社会の関心が高まっています。ジェンダー平等もSDGsでのアジェンダの一つです。スポーツはこのようなSDGs達成という観点でも大きな役割を持つコンテンツだと考えています。我々は過去に「スポーツの社会的な価値」をテーマにいくつか記事をアップしました。ご興味があれば是非↓ポチっとお願いします。
【Jリーグ編】企業のCSRにスポーツチームは貢献するのか?(2020年8月12日)
【Bリーグ編】スポーツチームと作る企業のCSR価値(2020年9月2日)
【野球編】スポーツチームと作る企業のCSR価値(2020年9月28日)
また、スポーツを活用した「女性の社会活躍」をテーマにした記事もいくつか過去取り上げました。こちらもご興味があれば是非↓ポチっとお願いします。
【女性ユーザー獲得】eスポーツを使って業界No1を追撃する
【B2C編】新興国市場へ進出するためのスポーツの活用方法&事例
【小売業界編】女性客の消費を喚起するスポンサーシップの活用方法
3. おわりに
以上、サッカーにスポンサーした海外事例でSNS上で最も注目度の高かった事例Top5でございました。
もし「このシステム興味あるなぁ」って方がいましたらご連絡いただければ幸いです。まだまだ開発段階ですが、毎日夜なべしてその精度と使いやすさをアゲアゲしています。
「スポンサー事例集めるのだるいわぁ」
「あの競技で成果が見込めるスポンサー事例を手早く知りたいわ」
「この業界、国内競合、あの海外企業の取組がサクッと知りたいわ」
と思う方には便利なデータベースに仕上がりつつあるので、ぜひぜひお気軽にお問い合わせください。
これからも引き続きスポーツチームと企業のビジネスとしての関係構築に役立つ情報を発信していきます。Twitter・Facebookのフォローもどうぞよろしくお願いいたします!